ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

ジョセフ・スティグリッツのIMF批判

 ジョセフ・スティグリッツ教授の『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』を読みました。
 彼は2001年ノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者です。そしてこの本も良く読まれています。図書館予約から相当経てから手にする事が出来ました。
 350ページほどの大著ですが、無理なく読めたのは、彼の明晰な論理と分かりやすい言葉、そして訳者である鈴木主税の力によります。
 この経済の書におけるグローバリズムの定義をはてなキーワードで見ますと、「市場主義とアメリカ的価値観・社会システムの合体物を世界的に展開しようとする、『新手の文化的世界支配戦略』 のこと」とあります。正にこの定義に従ってスティグリッツは自説を展開しています。
 ではなぜこのグローバリズムが世界を不幸にしたのでしょうか。
 その正体はIMF国際通貨基金というのが文字通りの訳。それを繰る国連の機関とも言えるでしょう)や世界銀行だというのです。特にIMFです。それは教授によれば、「世界の安定性を高め、景気後退の脅威に直面する各国が景気浮揚策をとる資金を確保すること」が本来の目標でした。ところがそればかりでなく、米国金融界の利益の為にも行動していたのです。IMF幹部の多くが金融界出身で、その仕事を終えた後、また金融界に「天下って」莫大な給与を得ていたのです。つまりIMFは二重の基準でもって世界に君臨していたのです。それが今日の世界を不幸にした正体だと教授は語っています。
 教授はこの本を書く前にクリントン大統領の経済諮問委員会、そして次に世界銀行にいて、グローバリズム発展途上国貧困層に破壊的な影響を及ぼした事をつぶさに見ており、IMFエコノミストたちにもしばしばその誤りについて苦言を呈していたのでした。
 しかしIMFのエリートたちは、その苦言に対して全く耳を貸さなかったと教授は言っています。彼らは絶大な権力を握っていました。
 イエス・キリストは「目がありながら見えないのですか。耳がありながら聞こえないのですか。あなたがたは、覚えていないのですか」(マルコ8:18)と詰問されましたが、「悪」の権化と化した彼らには通じませんでした。
 教授はまた「市場経済が効率的に働くのはすべての前提条件が満たされたときだけである。ある分野で改革がなされても、他の分野での改革がともなわなければ、むしろ事態はいっそう深刻化するかもしれない」と警告していますが、現在の日本は失業が増えた場合に備える安全網(=セーフティネット)が整っていなかったので、まさに深刻な事態に陥っています。貧困層が続出し、自殺者が増加しています。
 IMFには企業のためのお金なら何億何兆とあるが、一般市民のためのお金はそれよりずっとわずかな額さえないというごうつくばりのスタッフばかりいます。
 教授はこの本で特に発展途上国の悲惨な実態を詳しく述べ、最後の章で「世界を幸せにするグローバリズムの道」を提示しています。
 それは私たちにかすかな希望を与えますが、それよりIMFという機関がいかに恐ろしいものかという印象の方がはるかに頭に残ってしまいました。
 「聞きなさい。金持ちたち。あなたがたの上に迫って来る悲惨を思って泣き叫びなさい。あなたがたの富は腐っており、あなたがたの着物は虫に食われており、あなたがたの金銀にはさびが来て、そのさびが、あなたがたを責める証言となり、あなたがたの肉を火のように食い尽くします。あなたがたは、終わりの日に財宝をたくわえました。見なさい。あなたがたの畑の刈り入れをした労働者への未払い賃金が、叫び声をあげています。そして、取り入れをした人たちの叫び声は、万軍の主の耳に届いています。あなたがたは、地上でぜいたくに暮らし、快楽にふけり、殺される日にあたって自分の心を太らせました…」(ヤコブ5:1−5)。
 かつての信仰大国アメリカは今や不信者に満ち溢れ、キリストの愛を全く失ってしまいました!