ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

原発の配管こそ最大の問題

 「御住まいの所から地に住むすべての者に目を注がれる。主は、彼らの心をそれぞれみな造り、彼らのわざのすべてを読み取る方」(詩篇33:14,15)。
 図書館から『原発をつくった私が、原発に反対する理由』(菊池洋一著)を借りて読んだ。
 以前ブログで言及した事のある蓮池透氏は、東電で32年間福島第一原発の保守管理者として働き、原発に精通する人だったが、上記本の著者菊池洋一氏もまた、原発の企画工程管理専門家として、原発の仕組みに対しては非常に詳しい。
 菊池氏は東電社員ではない。米国ゼネラル・エレクトリック社に所属し、福島第一原発6号機の建設に関わった。
 だから菊池氏が原発に反対する理由は良く分かった。第一原発事故の原因については、様々な事が言われているが、菊池氏がこの本で繰り返し述べているのは「配管」の事だ。そしてそれは「いかに原子炉や格納容器が頑丈につくってあったとしても、見過ごされがちな『配管』こそが危険だと考えていました」という言葉に凝縮されている。
 私たち素人は新聞などでよく見かける、極めて単純化された図に惑わされていないだろうか。実際には原子炉内部は、配管が非常に複雑に絡み合った「お化け」(=怪物、形や大きさが異常なもの)である。私が所属する教会は福島第一原発の近くにあり、今尚帰還困難区域に指定されているが、その会員には元東電の技術者が何人かいる。その人たちに伺っても、その事実を裏付けている。以下は私の要約だが間違っていたら指摘して欲しい。
 福島原発の1−5号機はGE社のMARK1沸騰水型で、圧力容器は著者によると、底は「ザルのように穴だらけ」になっている。下からぎっしり配管群を差し込む為だ。容器外にある配管は床に固定する事が出来ない。ほとんどが宙吊りになっている。それらはハンガーで吊られている。そしてそのハンガーそのものを支持する縦長の棒がある。
 なぜそんな不安定な構造になるのか?運転中の原子炉そのものが巨大な熱で膨張し、縦に伸びるからだ。だから床に固定すると、筒状のノズルなどの破断が起こる。冷却水が無くなり、炉心溶融になる。
 菊池氏が一番心配したのは、その支持棒(ロッド)の溶接である。それは溶接工が手で行う。極めて限られた場所において、その溶接を上向きで行わなければならない。下向きの半分くらいしか強度が出ないそうだ。
 昔職業訓練学校で板金を勉強していた頃、その溶接を見た事がある。溶接科の生徒は実に芸術的な上向き溶接をやっていて、凄いと思った。しかしそれは十分なスペースと余裕があっての事、原発のような複雑な配管をぬって、上向きの溶接をするのは至難の業である。溶接中に火の粉が降って来ても、避ける事が出来ない。
 ロッドだけではない。無数の溶接個所があり、また溶接中に出来たピンホールを、全て調べるわけにもゆかない。ちなみに私は厚板の溶接検定で、このピンホールの為落ちた経験がある。
 当然脆弱な個所が出て来るし、度重なる地震で配管同士がぶつかって損傷する事もある。
 かくて3・11以前から、配管の亀裂は無数にと言ってよいほど生じていた。菊池氏のような達人は、配管の図面から、どこにそれが生じるか、ほとんど見当をつけていた。
 3・11大地震の時、建屋内部にいた作業員たちは、配管同士がぶつかる恐ろしい音を聴いていたという。
 それゆえ菊池氏は「大量の配管の亀裂、破損部分から、水が漏れ続けていたことは間違いありません。津波が来る前から、冷却機能は失なわれていたのです」と結論付けている。
 炉心溶融津波が原因ではなかった。元東電首脳の刑事裁判で、最大15.7メートルの津波がどうのこうの争う以前の問題である。こうした配管損傷による炉心溶融という視点を、菊池氏から初めて教えてもらった。氏は生涯をかけて反原発の行脚を続けている。