ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

『東日本大震災を解き明かす』からちょっと考えた事

 NHKサイエンスZEROシリーズから6月に発行された上記の本を図書館で借りて読みました。3人の若手気鋭学者による共著です。古村氏が48歳、伊藤氏38歳、辻氏32歳と続きます。126ページと薄いほうですが、中身は最近の知見がふんだんと盛られ、非常に濃い内容となっています。地震とか津波の原理は、素人にはなかなか難しいので、出来るだけ分かりやすく書いたのでしょうが、科学の内容を平易に読者に伝える力ではトップを行く、火山学者の鎌田氏の啓蒙本に比べれば、まだまだ工夫は必要でしょう。私もどれくらい理解出来たか。
 とはいえ、東日本で起きた地震津波の仕組みについては、新聞などで報じられたものや、有名な石橋氏らの既刊の本より一歩踏み込んでいる事が良く分かります。まずプレート境界型の地震について、両者が強く固着している部分をアスペリティ(固着域)と呼ぶというのは初耳でした。それにより陸のプレートが地球内部方向に引きずり込まれ、限界が来てその固着が解かれ、バネのように元の位置に跳ね上がると、地震が生じます。研究者たちによると、このプレート境界のどの部分にアスペリティーが出来ているのか、GPS(人工衛星を使った全地球測位システム)で分かるようになっています。随分進んだものです。
 ところが今回の地震ではこのアスペリティーが生じない陸側部分(ここに海溝<南海ではトラフと呼ぶ>の堆積物が次々と剥ぎ取られ、付け加わって出来た付加体が存在します。この言葉確か平朝彦教授が割合最近命名したのでは)で、陸側プレートの跳ね上がりと共に、付け加わった付加体も跳ね上がっただけでなく、滑り過ぎて陸の岩盤と共に海側に大きく伸びたようなのです。

左図は上記本を参照に書き換え(下手なペイントで失礼)たものです。この海側に突き出した付加体と元の大陸側岩体との間には引っ張り力が働き、正断層が形成されます。この断層右の付加体が地震で大きく隆起した為に、大量の海水が持ち上がり、大津波になったと推定されています。今回の地震で隆起した範囲は200×100キロほどで、持ち上がった海水量がどれほどか、想像を絶すると研究者たちは言っています。
 また隆起した海底面の陸側では、逆に海底面が沈降し、そこへ向かって一時的に陸側の海水が吸い寄せられて引き波となり、一瞬海底が覗ける事になります。
 研究者たちはそれがまだ仮説に過ぎないとしていますが、今度の大津波を本当によく説明していると思います。通常付加体には逆断層が多く見られます(それどれのプレートが押し合うので)。ところが100メートル以上のそそり立つ崖(正断層)が見つかったのが、解明の突破口になったようです。その仕組みを知っただけで、この本を読んだ価値がありました。
 この津波の仕組みを考えながら、ふと浮かんだのが、出エジプト記にある紅海の奇跡です。
 「そのとき、モーセが手を海の上に差し伸ばすと、主は一晩中強い東風で海を退かせ、海を陸地とされた。それで水は分かれた。そこで、イスラエル人は海の真中のかわいた地を、進んで行った。水は彼らのために右と左で壁となった…水はもとに戻り、あとを追って海にはいったパロの全軍勢の戦車と騎兵をおおった。残された者はひとりもいなかった」(出エジプト14:21,22,28)。
 これを見ますと全能の神は強力な東風で紅海の水を退かせ、乾いた地とされました。しかしその後の記述では水は左右で壁となったとありますから、その仕組みがよく分かりません。ただ海底面が乾くほど水が引いて左右に壁が出来たからには、かなり複雑な動きがあったのでしょう。単なる風だけでなく、その強大な力で海底面に正断層か逆断層が一つか二つ出来て、隔ての垣となったのか、想像すると楽しくなります。超自然的現象ではありますが、津波の仕組みからも説明出来る方おられたら教えて下さい。