原子力エネルギー:不必要、不経済、保険の対象にならない、避難出来ない、安全でない
「金銭を愛する生活をしてはいけません。いま持っているもので満足しなさい。主ご自身がこう言われるのです。『わたしは決してあなたを離れず、また、あなたを捨てない』」(へブル13:5)
2013年10月11日のハフポストサイトでは、上記の題でラルフ・ネーダー氏が記していました。抄訳の一部掲載。
ネーダー氏は1934年生まれ、弁護士であり、また社会運動家でもあります。特に消費者運動で名前を知られた人ですが、私はあまり鮮明に覚えていません。
そのネーダー氏が日本の原発事故を受けて、いろいろ考え、ニューヨーク市で開かれた公開討論会に出席しました。この週のはじめ10月7日の事です。
そこには元米国原子力規制委員会(NRC)の委員だったピーター・ブラッドフォード氏、元NRC委員長グレゴリー・ヤッコ博士、元日本の首相菅直人氏と、原子力技術者アーニー・ガンダーセン氏がいました。
「福島で原子炉の危機をもたらした地震と津波以来2年以上経ちます。これは1986年のチェルノブイリ以来、最大の核災害です…」こう切り出したネーダー氏は、福島の情報を丹念に集めていたのでしょう。2日前の9日に生じた高濃度汚染水を、作業ミスから6人が被曝した事にも触れていました。
公開討論では福島は勿論、米国の手厚い補助金付き原子力産業の現状の危機を論じました。
ブラッドフォード氏は,競合するエネルギー産業が、既にどれほど原子力産業の衰退をもたらしているかを、パワーポイントで詳しく述べました。
そして特にこの討論が行われたニューヨーク市からおよそ48キロのところに存在するインディアン・ポイント原子力発電所に関して、その安全性が論じられました。
この発電所は長らく安全性の問題が飛び交っており、位置が地震断層の近くにある為、ニューヨークの多くの住民たちの大きな関心のもとになっています。
2008年に、コロンビア大学の研究者がインディアン・ポイントの北数キロの場所で2つの活断層が交わっていることを指摘し、地震が起これば甚大な原発被害に発展すると発表しました(ネットより)。
インディアン・ポイントは1970年代に建設された古い原発で老朽化が進み、使用済み燃料プールの水漏れ、ハドソン川への汚染水流出、建屋内の爆発など、近年事故が頻発しているそうです。
そして、半径80キロ圏内には、ニューヨーク市の人口約800万人の大半を含め、1,720万人の住人がいるとの事です。
福島の原発事故では、アメリカは在日米国人に対し80キロ圏内を立ち入り禁止としましたが、インディアン・ポイントで同様の災害が起こっても、それだけの人数を避難させることは不可能と考えられます。
アンドリュー・クオモ知事はインディアン・ポイントの閉鎖を求めています。上院議員の時期のヒラリー・クリントン氏もそれを求めました。主要な理由は、この2つの原子力発電所周辺の50マイルに及ぶ人口の緊急避難が不可能であるという上記の理由からです。
そうであるなら、なぜ遅らせるのですか?主として原子力産業と迎合する管轄省庁の抵抗の為です。NRCは危険で費用のかかる不必要な原子力産業を保護し、支えようとまでして行動し、監視委としての役割に行き詰まっています。原子力産業のとっておきの主張は、それが温室効果ガスを回避するからだという事です。しかし物理学者アモリー・ロビンス氏が言うように、もしその原発への投資が再生可能でエネルギー保存の方向へ変われば、遥かに無害な熱量をもっと生み出す事になるでしょう。(*ロビンス氏の事は、ロッキーマウンテン研究所サイトから知る事が出来ます。福島原発事故から1か月後の文章はhttp://blog.rmi.org/NuclearPowerJoinLiveDebateから)。
1974年以来米国では原子力発電所は建設されて来ませんでしたが、オバマ大統領の時2基許可されました。
原子力エネルギーの費用を本当に理解する為には、核燃料サイクル自体の不合理さを考慮しなければなりません。それはウラン鉱山とそのひどい選鉱くずで始まり、次に燃料棒の製造と純化、そうした棒を多重に保護されているドーム状の発電所に運び設置する事と、巨大な量の放射能が臨界に達する発電所を始動するまでです。危険な核反応の対処は完璧な操作が要求されます。そしてそれから熱い放射性廃棄物と汚染物質の貯蔵と監視がありますが、それは25万年も続きます。永久に封じ込めの為の場もなく、許可も得ていません。
核エネルギーは不必要で、保険がかけられず、不経済で、避難不可能、そして最も大切なのは安全でない事です。それが引き続き存在する事実は、恐ろしいロビイストたちの存在する結果です。福島の教訓を無視してはなりません。