ハリケーン・カトリーナから10年、福島との比較
「雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまいました。しかもそれはひどい倒れ方でした。」(マタイ7:27)
2015年8月30日と9月2日の東京新聞では、米国ルイジアナ州ニューオーリンズ市の8割を冠水させたハリケーン・カトリーナの来襲から10年が経過した事を伝えていました。
画像はhttp://billieblog.seesaa.net/article/7310339.htmlから拝借。
被災時市の人口は45万あったそうですが、そのうち1800人以上の犠牲者が出ました。行方不明者も数千人、被害に逢った他の4つの州も含め、被災者数は数百万人にも及んだそうです。
この五段階の強さでは過去最大級の「5」を示したカトリーナ、市では全域に避難命令が出され、約8割の人々が安全な地域に脱出しましたが、残った人々は車などでの移動が困難な低所得者や高齢者が多く、川や運河の堤防が決壊した後、逃げ遅れて犠牲者が続出しました。市としては全く想定外の自然災害となりました。
それから10年、東京新聞によると、「人口は被災前の九割まで回復」し、復興を祝う式典まで開かれたそうです。しかし低所得者が多く住んでいた「ロワー・ナインス・ワード」という地区では、住民の3分の2が戻って来られず、被災した当時のままの廃屋が多数残っています。そこを再建出来ない彼らは、廃屋に住み続けているそうです。
一方復興した地区では、裕福な白人が戻って来たり、移住して来たりしています。同じく裕福だった当時の黒人市長ネーギンは、白人層の厚い支持を受けており、彼らの為の優遇策を講じました。例えばネットで調べると、高級住宅に住む裕福な人々への住宅再建補助制度では、同じ家屋の広さで比較した場合13万ドル、一般住宅で3万ドルと、大きな格差が生まれています。裕福な白人層はますます裕福に、貧困な黒人層はますます貧困化しています。ちなみにネーギンは、この復興事業に絡む収賄で、2014年7月禁固10年の判決を受けました。
もっとひどいのは、いわゆる震災便乗型資本主義=ショック・ドクトリンで、低所得者向け団地の取り壊し、私立学校への公的援助による競争原理の結果としての公立学校の激減策などで、貧しい黒人貧困層の基本的人権が奪われています。
一方東日本大震災の結果として、現状は一体どうなっているのでしょうか?勿論津波被害に遭った岩手・宮城・福島の3県で、復興はいまだ遅々として進まず、特に原発被害に遭遇した人々は4年半経過した今でも、故郷に戻って来る人々は少ないです。それはなぜか?ニューオーリンズでは裕福な白人を主体とする人々は戻って来ましたが、理由はそこに原発による放射能汚染が無かったからです。一方福島は放射能汚染があります。私も経験した事ですが、除染が除染になっておらず、せっかく住宅地を除染し線量が下がっても、また元通りになるという現象が続いているので、特に若い所帯を主体に、戻るのを躊躇しているか、止めて他の県などに移住する人々が多くいるからです。いまだ風評被害も大きく、このままでは福島は残っている高齢者やごく僅かな稲作農家の人々を除き、先細り→消滅へと向かうのではないかと、私は危惧しています。
なお原発から80キロ圏内にいた米国人は避難しましたが、その後は放射能関係の調査などを行う目的以外では、あまり福島に戻っていないのではないかと思います。彼らは放射能の怖さを知っているからです。ですから震災便乗型企業も、福島には進出していないのではないかと想像しています。日本貿易振興機構のサイトを見ても、フクシマと聞いただけで敬遠している企業が多数占めているようです。大企業は宮城県以北を狙っています。