ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

森林除染せずと、赤坂憲雄氏の切々たる思い

 「山地もあなたのものとしなければならない。それが森であっても、切り開いて、その終わる所まで、あなたのものとしなければならない」(ヨシュア17:18)
 2015年12月環境省は、民家や農地の境から20メートル奥の森林を除染しない方針を固めました。その理由は「福島県内で行った調査の結果、森林から生活圏に影響を与えるような放射性物質の飛散が確認されなかったことや、除染で広範囲にわたって落ち葉を取り除くことで土壌が露出し、土砂が流出するなどの悪影響が懸念される」と言う事だそうです。
画像はhttp://www.j-fic.com/news/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%9C%8C%E5%B7%9D%E4%BF%A3%E7%94%BA%E3%81%AE%E5%B1%B1%E6%9C%A8%E5%B1%8B%E5%9C%B0%E5%8C%BA%E3%81%A7%E6%A3%AE%E6%9E%97%E9%99%A4%E6%9F%93%E3%81%AE%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%82%92%E6%A4%9C.htmlから借用。
 この画像では樹木の間伐が行われ、ユンボが入り込んで来ています。どこの山林もこういう状況なら、集草や土剥ぎ、そして黒のフレコンバッグ詰めは不可能ではありません。勿論熟練したユンボの運転手でも危険は伴います。搬送中に横転したのを、私はそばで見ています。しかしそうではなく、木々が絡み合う鬱蒼とした険しい山林での除染は、事実上不可能です。ユニックやユンボが入る為には、その通り道の木を全て倒し、安全な道筋をつけなければならず、それは周囲の環境を破壊する事に繋がるからです。
 私は環境省の本音はこうした技術上の問題がある事と、各市町村での除染費用がトップクラスである事、にもかかわらず除染効果がほとんど現れていない事などではないかと思います。
 でも実際山林除染を経験した事のない学者らからは、除染を何とかしてくれという訴えが出ても当然でしょう。

 山林は古くから生業の場であり、その再生に向け、「新たな除染技術の開発に継続して取り組んでいく必要がある。『出来ません』では済まされない」と噛み付いたのは、昨年12月29日の福島民報の社説でしたが、今年1月17日の同紙日曜論壇では、東北民俗学の第一人者で、県立博物館の館長でもある赤坂憲雄氏が「山や川や海を返してほしい」と、切々たる訴えをしていました。画像はネットから借用。
 森林除染は以前にも触れましたが、家屋から20メートルの範囲内と決まっています。しかし赤坂氏は反論します。生活圏とはそんなちっぽけなものではない、もしそうだったら民俗学などという学問そのものが成立しなかっただろうと問うた上で、その20メートルの範囲内(*除染した事にして、人々を強制的に帰還させる意図)を仮に持続させても、「汚れた里山のかたわらに『帰還』して、どのような生活を再建せよと言うのか。山や川や海を返してほしい、と呟く声が聞こえる」と疑義を表明しました。
 私も20メートル以内の簡単な測量をしましたし、実際そんな範囲内で暮らせとなったら、息苦しさで窒息してしまうでしょう。
 赤坂氏は豊富な調査体験から、福島の里山の奥地での多彩な食文化とそれを担って来た女性たちの事に言及しています。山菜やキノコ…切り昆布・麩・コンニャク・笹巻き・三五八・凍み豆腐・凍み餅。浜通りのアンコウのとも和え・ウニの貝焼き・がにまき・お煮がし・金目の煮もの・べんけい・ほっき貝。中通りの、あんぽ柿・ざくざく煮・はごめきゅうり・霊山ニンジン・イカニンジン。会津の、えご・こづゆ・ニシンの山椒漬け・みしらず柿…」。全く豊かな食文化です。私はこの中からいわきに引っ越して来て、初めて知ったものも多々あります。
 その加工の為の食材確保が原発でほぼ駄目になっています。二本松の20メートルの範囲内から、こうした食のための多彩な素材を得る事なんてあり得ないと思っていました。
 東電に向かって、元の生活を返してくれ!と呟く女性たち。胸が張り裂ける思いです。
 しかしこの里山除染をしないという方針、大きな反響を呼んで、早くも2016年2月4日には環境副大臣が「里山しっかり除染」と表明し、「住民が日常的に入る生活圏、里山などはしっかり除染していく」と強調しました。
 そして5日環境省、復興庁、農林水産省によるプロジェクトチームを発足させました。どんな方策が出て来るのでしょうか。その行方を注目したいと思います。