活動家湯浅誠氏の仕事から見えて来た事、聖書の例
このブログでもしばしば名前を挙げさせてもらっている湯浅誠氏の『岩盤を穿つ』という本を読みました。湯浅氏は『どんとこい、貧困!』『反貧困ー「すべり台社会」からの脱出』などの著作の題から分かるように、れっきとした反貧困の活動家です。
『岩盤を穿つ』は上記以外の新聞や雑誌などで発表されたものを集大成した本で、やはり学ぶべき事が多くありました。
今日本は所得格差がどんどん広がり、「一億総中流」と呼ばれていた階層がほぼ消失し、一握りの富裕層とその他大勢の貧困層に分かれています。
それまで貧困層に対しては窮乏の為に「儲けにならない」とばかり、その層を対象としたビジネスはほとんどありませんでした(全然ではない事は消費者金融などの存在で分かります)。
ところがこれだけ貧困層が日本中にあふれると、つまりその全てではありませんが、「ホームレス・ネットカフェ難民・日雇い派遣労働者・日雇い派遣労働者・生活保護受給者・母子家庭・障害者・多重債務者・年金生活者等々」といった貧困層が分厚い層を形成し始めると、それに目をつけ「こうすれば儲かる」という「貧困ビジネス」が現れて来ます。
湯浅氏はそこに注目してあくどい儲けをしているこの業界にメスを入れ、鋭く告発しています。「貧困ビジネス」という名称自体が湯浅氏の造語である事は、この本の第二章で分かります。
それによりますと、3つの大きなビジネスが取り上げられています。即ち昔ながらの消費者金融、「月給仕事などに就くことができない労働者を安く使う日雇い派遣会社」、そして「敷金・礼金・仲介手数料不要」と、入居時の諸費用軽減を謳っている通称ゼロゼロ物件を扱う賃貸不動産会社が挙げられています。
そうしたビジネスを営む人々の中には、かつて自分もそうだった人もいて、そのひどい貧困者収奪の為に、時々新聞沙汰にもなっています。
彼らが寄ってたかって貧困者がやっと稼いだお金をどんどん収奪してゆきますから、貧困者は幾ら頑張ってもその生活から抜け出す事が出来ません。
聖書の時代はそうした収奪は、イスラエルに襲いかかった外国(アッシリア、バビロンなど)の軍隊による民のモノの争奪という形で現れて来ます。ヨエル1:4には4つのタイプの食い荒らす「昆虫」が出て来ますが、その被害者は敗北で「貧困」になったイスラエルの民を指しているのでしょう。
「かみつくいなごが残した物は、いなごが食い、いなごが残した物は、ばったが食い、ばったが残した物は、食い荒らすいなごが食った」。
これは日本語訳としてどうかと思われるものもあります。英語訳ではだいたい「いなご」で形容する形が違っています。ヘブル語ではガザム、アルベ、イェレック、ハシールなどと分けて使用しています。でも英語辞書ではやはり「いなご」となっています。おそらくいなごを主体とし、それに似た昆虫を指しているのでしょう。遺物が残っているわけではないので、実際のところは不明です。無理して日本語にしなくても、脚注で説明したらよいのにと思う事があります。
貧困層を食い尽くすビジネス産業から、似たような光景を連想させる難解な箇所を取り上げて見ました。