モノアミン酸化酵素A産生に関わる遺伝子が悪を生み出すのか
3月9日のサイエンティフィックアメリカン誌(英文)では、「遺伝子が人々を邪悪な者とするのか」という二人の人々の質問に対して、マギル大学の神経化学者ダニエル・ラメッティ氏が答えています。
氏自身が住むマンションでは悪を行なう者たちがはびこっており、氏は講読している新聞が早朝盗まれたという小さな犯罪から書き始めています。
そして科学者たちは悪い行いの真の原因がどこにあるのかを知りたがっており、それが私たちの遺伝子に因っているのか、環境に因っているのかを追求しているが、答えはその二つが結び付いたものだと答えています。
今から9年前の研究から、モノアミン酸化酵素A(MAOA)というものを制御している遺伝子が見つかり、その産生量が少ないと人は暴力的になるという事が分かりました。それが低いと攻撃的な衝動を制御出来なくなってしまうのです。このタンパク質の立体画像を下に示しておきます。
米国国立精神衛生研究所のチームは、2006年にこのMAOAと暴力との直接的な繋がりをさらに深く解明しました。
ダニエル・ラメッティ氏はもっと最近の研究も踏まえ、悪い行い、即ち大量殺人、武器を伴う強奪、そして自身が経験した新聞の盗みは、悪い環境と相互に影響し合う遺伝子によりもたらされるのだろうと推定しています。
しかし聖書の記述を見る限り、それは事実ではありません。聖書では悪い思い(罪)と行いが環境と結び付いているという事など一言も言っていません。最初の人アダムとエバが罪を犯して楽園を追われた時、確かに環境は激変したと言えるでしょうが、それより二人のうちにあった遺伝子が何らかの制御を解かれ、悪い性向へと向かう遺伝子が子の世代で明確に発現し始めたと言って良いでしょう。二人の最初の子であるカインは弟アベルを殺してしまいました。カインの末裔が増え始めると、「地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾く」ようになりました。
ですから使徒パウロは「ちょうどひとりの人(*アダム)によって罪が世界にはいり…全人類が罪を犯した」(ローマ5:12)と言っています。「義人はいない。ひとりもいない」(ローマ3:10)という事です。罪人である母親の胎を出て、幼児段階より徐々に罪の遺伝子が発現し始めます。
「ああ、私は咎ある者として生まれ、罪ある者として母は私をみごもりました」(詩51:5)。
この聖書の記述からして、ダニエル・ラメッティ氏も罪人です。自分は新聞を盗むような「ささやかな犯罪」は行なわないと言っていますが、その心を全て洗い出せば、「悪い考え、不品行、盗み、殺人、姦淫、貪欲、よこしま、欺き、好色、ねたみ、そしり、高ぶり、愚かさ」(マルコ7:21−22)が巣くっていた事を如実に知る事でしょう。モノアミン酸化酵素Aの多寡が、人を善人、悪人とするのではありません。