ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

林壮一著『オバマも救えないアメリカ』を読んで思った事

 林氏は1996年〜2010年まで米国に滞在し、その貧困層への積極的取材で知られています。前作『アメリカ下層教育現場 』(光文社新書)を読みましたが、今度は前回米国で知り合った貧困層の人々の再訪だけでなく、車で各地を訪れ、2009年1月にオバマ政権が発足した後、彼を支持した人々に積極的なインタビューを試みています。
 しかしその内容は深刻です。米国経済は停滞し、労働市場は悪化の一途を辿っているように見えます。7月8日に発表された6月の失業率は遂に9.2パーセントまで上昇しました。AP通信によると、仕事を望んでいながら雇用されなかったり、常勤の仕事を得られなかった人々の割合は、16.2パーセントも占めています。
 ですから貧困層でホームレスになっている人々が相当いるわけですが、林氏はそうした路上生活者などの中に入って行き質問しています。この本ではその回答がこなれた日本語になっており、実情を垣間見る事が出来ます。英語を専攻したわけではないのに、大学卒業後は怪我で夢が挫折し、一念発起して英語を猛勉強してからノンフィクションライターとして渡米し、体当たりで人々と会話を重ねて来ました。やはり人は生活がかかってくると必死になるものだという事を、改めて実感しました。
 ところで内容の一部ですが、林氏はオバマ大統領の豪邸をシカゴに訪れており、厳重な警備がされているので、周囲から観察しています。あらかじめ映像で「6199平方メートルの土地に、7つのバスルームがある」という情報を得てそこに向かったわけですが、その写真を見て本当に驚きました。まさにアメリカンドリームを達成した人の証となる豪華な建物です。シカゴ全体は貧困化が進んでいますが、オバマの住む一帯は金持ちだけが住んでおり、周囲とは隔絶されています。
 林氏は「豪邸を手に入れた第44代合衆国大統領は、選挙戦の最中、弱者に手を差し伸べる発言を繰り返したが、彼は貧民の苦しみを理解しているのだろうか。富と栄誉を手にしたオバマの言葉など信用できるか!と言い放つ底辺の声こそ、アメリカの現実を示しているように思えた」と言っています。
 まさにその通りだと思います。昔読んだマルクスの本によれば(『経済学批判』序言)、「人間の意識がその存在を規定するのではなくて,逆に人間の社会的存在がその意識を規定する」とあります。絶対的真理ではないですが、説得力があります。オバマがどれほどあがいて貧困層を救おうと願っても、共和党保守層の抵抗で実現不可能になりつつある事は、林氏が出会った数多くの貧困な人々とのインタビューでも明らかでしょう。オバマは次の大統領選挙で破れたとしても、その豪邸に戻り、何不自由ない生活を送る事が出来るわけですから。
 しかしそれでは人々は救われません。「人間の意識がその存在を規定する」のを可能にして下さる救い主イエス・キリストにより頼み、信仰を得る事がまず第一というのが私の証です。使徒パウロと共にこう言いたいと思います。
 「ことに信じる人々の救い主である、生ける神に望みを置いているからです」(テモテ第一4:10)。