ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

赤木智弘著『若者を見殺しにする国』を読んで

 朝日の月刊誌論座に載った赤木智弘氏の『「丸山真男』をひっぱたきたいー31歳フリーター、希望は戦争』という小論文は、多くの反響があった為、赤木氏の名前は一躍有名になりました。題だけではどういう事か分からなかったので、いずれ論座のバックナンバーを借りてと思っていたところ、朝日が文庫で上記題のものを出してくれたので、それを買いました。そこに論座の論文も収まっています。第四章に全文載っています。
 400ページ近い文庫で結構読み応えがありました。そしてなぜ著者が丸山真男をひっぱたきたいのか、なぜ希望が戦争なのか、その意味が良く分かりました。
 そして赤木氏は論座などに載った反論に対して、いちいち丁寧に回答していますが、それがなかなか論理的で並みの人ではないなと感じました。
 全編を通じて分かるのは、赤木氏の指摘通りバブル崩壊以降に社会に出た若者の世代と、経済成長期に生き抜いて来た世代、つまり私たち団塊世代及びそれ以前の世代との抜き差しならぬ格差・対立という事でしょう。後者はワークシェアリングどころか、退職後もその会社乃至は関連会社に居座り続け、現状の平和がずっと続く事を願っています。完全にフリーになっても、生きて行くだけの年金があります。しかし前者は一生懸命働いても報われず、どうあがいてもバブル期の水準に到達する事が出来ず、滑り台社会をどこまでも落ち続け、遂にはホームレスになってしまい、死をも覚悟せざるを得ないという図式になります。私たちの世代が現状維持にしがみついている限り、バブル崩壊以後の世代は全く救われない事になります。今の平和を守れ!はそうした若者世代の犠牲の上に成り立っています。そういうのは知的インテリの多い共産党などがおてのものでしょう。
 この階層の固定化を打ち破るのは、戦争といった極めて流動的な出来事が勃発しない限り、不可能に近いようです。赤木氏はそれを心底願っているわけではありませんが、私たちから上の世代がかたくなに現状維持を叫び続け、若者世代に救いの手(まずはお金)を差し伸べない限り、戦争でも起こり、太平洋戦争の時のように立場が逆転し、しかも名誉の戦死を遂げるほうが、声も立てずに黙って死んで行くよりましという事になるのでしょう。
 丸山真男氏は勿論剃刀のように頭の切れる東大法卒のエリートでしたが、陸軍2等兵として徴用され、そこで学歴も教養もない1等兵にいじめ抜かれたそうです。「丸山真男をひっぱたきたい」とは、戦争でも起きて世の中流動的になれば、平和だけを固持しエゴの塊となっている私たちの世代を、軍隊の中で思い切りひっぱたいて、憂さを晴らす事が出来、しかも靖国神社で平等に奉られるという意味で赤木氏は用いています。
 問われているのは、まさに金に汲々としている私たちの世代でしょうが、もっと上に立つ一握りの富裕層はほくそえんでいるかも知れません。
 でも今の時代は必ず終末を迎え、救い主は今度は支配主として不平等な社会を完璧に正されます。その方の到来の予兆がこうした愛の冷えた世代間の戦いなのかも知れません。
 「民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります…また、そのときは、人々が大ぜいつまずき、互いに裏切り、憎み合います…不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります」(マタイ24:7,10,12)。