ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

ロバート・B・ライシュ著『暴走する資本主義』を読んで

 上記ライシュ教授の本は2008年発行のものです。2011年8月は米国で負債上限引き上げとか、デフォルト(=国家債務不履行)、信用格付などといった経済で使われている用語が飛び交い、ニュースサイトでもそれ一色、いかに米国経済が危機に陥っているかを見せつけています。
 従ってライシュ教授もこうした事態を受けて、また別の本を書かれると思います。旺盛だった消費性向が鈍り、今後消費者がどういう行動に出るのか、いろいろ分析するでしょう。一方ニューヨークタイムズでは、ノーベル賞を受けたポール・クルーグマン教授が舌鋒鋭く、茶会に集う共和党最右翼の動きを批判しています。そして米国格付け会社スタンダード・アンド・プアーズの今度の措置そのものが鉄面皮で、信用出来ないと言っています。
 経済の門外漢ですが、日本の景気にも関わる事なので、一応読んではいます。
 ライシュ教授の一貫した主題は明確です。1970年以前の米国は「米国型民主的資本主義」と呼ばれるように、一見両者が密接に連動しながら機能しているように見えました。そこでは所得と富の格差は縮小し、巨大な中間層が出現していました(日本も然り)。この制度下で消費者や投資家の選択肢は非常に限られていました。ところが70年以降状況が一変し、比較的小さな企業も大きな競争力をつけ、それによって「消費者」と「投資家」が飛躍的に成長し、大いにモノ申す存在となりました。逆に民主主義が大いに衰退し、投資家と消費者の利益追求志向で、企業で働く労働者たちの賃金がどんどん圧縮され、かつての中間層から下層へと貧困化するようになりました。かつての大手寡占企業を支えた政府も落ちぶれ、巨大な労働組合も解体してしまいました。この資本主義の暴走を著者は「超資本主義」と名付け、その動きを詳しく追っています。
 かつて米国旅行した時買物した事のあるウオルマートも、消費者第一の価格設定でさらに業績を伸ばして投資家たちを喜ばせ(勿論消費者も)、そこで働く労働者たちはロクに生活出来ないほど賃金が下がって泣いています。先にアマゾンのオンライン書店の仕組みを追求する為、そこの千葉物流センターに潜り込んだ人のルポをこの日記で紹介した事がありますが、そこでも徹底した本などの購買層を第一にしたサービスの為、いかに物流センターで働く従業員たちが使い捨てにされているか、良く分かりました。
 この超資本主義が勝利すればするほど、収益の大部分が一握りの最富裕層にしか向かわず、経済格差がますます拡大し、雇用不安が増大し(現在の米国の失業率がよくその事を示しています)、地域社会の不安定化、環境破壊、人権侵害などが世にはびこる異常事態になっています。
 それらをどう是正するかが問題ですが、著者は一つの提案として、購入や投資を個人的な選択ではなく社会的な選択にする法律や規制を作る事を主張しています。しかし著者も言うように、そこへ向かう道は困難に満ちています。米国はそして日本はこれからどうなるでしょうか。
 一握りの大金持ちや投資家たちに対する聖書のみことばを挙げておきます。
 「聞きなさい。金持ちたち。あなたがたの上に迫って来る悲惨を思って泣き叫びなさい。あなたがたの富は腐っており、あなたがたの着物は虫に食われており、あなたがたの金銀にはさびが来て、そのさびが、あなたがたを責める証言となり、あなたがたの肉を火のように食い尽くします。あなたがたは、終わりの日に財宝をたくわえました。見なさい。あなたがたの畑の刈り入れをした労働者への未払い賃金が、叫び声をあげています。そして、取り入れをした人たちの叫び声は、万軍の主の耳に届いています。あなたがたは、地上でぜいたくに暮らし、快楽にふけり、殺される日にあたって自分の心を太らせました。あなたがたは、正しい人を罪に定めて、殺しました。彼はあなたがたに抵抗しません」(ヤコブ5:1−6)。