ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

音楽の持つ効果

 川畠成道というヴァイオリニストの書いた『耳を澄ませば世界は広がる』という本を読みました。
 川畠氏は幼少期に病気で視覚障害を負いましたが、頑張って桐朋学園大学を卒業、英国王立音楽院に留学してそこで首席卒業しました。そして現在世界で活躍しています。とはいえ、このクラシックの世界は女性の活躍がすごく、私は川畠氏の名前はこの本を読むまで知りませんでした。
 人はなぜ音楽を聴くのか。それは各人の人生と強く結び付いており、生きることに必要だからと氏は言っています。
 考えてみますと、人間が最初に創造された時、「音楽」に関する記述は皆無でしたが、エデンの園において主なる神と共に歩んでいましたし、野の花、空の鳥など自然の美しさを十二分に楽しむ事が出来た為、いつも主を賛美しつつ暮らしていたと想像されます。
 その後人間は堕落し、エデンの園を追われ、その東の地に定着しましたが、子孫の数は順調に増えて行きました。その頃の記述で初めて楽器と奏楽者の存在を知る事が出来ます。
 「その弟の名はユバルであった。彼は立琴と笛を巧みに奏するすべての者の先祖となった」(創世4:21)。
 既に4章から「立琴」などの楽器が登場します。人々は羊の毛で弦を作り(ラルキブデッリの奏者たちが用いているガット弦と同じ?)、笛と合わせて演奏を始めたわけですが、それは主として神を讃える時、或いは神から離れて祝福を失い悲しんでいる時だったでしょう。その時には既に音楽が生活に必要不可欠だったのでしょう。この4章の終わりに人々が初めて「主の御名を呼ぶことをはじめた」とありますが、このヘブル語動詞カーラーは他にも祈るなどの意味があります。要するに罪を犯して神に背馳した人々が、やはり神に立ち返る事を痛感し、生活の一部になっていた楽器を用いて「礼拝」を始めるようになったという事です。その伝統がノアとその子セム、ハム、ヤペテにも引き継がれ、ノアの洪水後全世界に散っても、世界中で音楽が奏でられるようになり、今日に至ったと考える事が出来ます。
 世界各地で多様な音楽が生まれました。川畠氏はラテンアメリカという暑く陽気な地域へ演奏に行った時、何と北欧のいかにも冷たい響きのするシベリウスのバイオリン協奏曲を弾いたそうですが、そちらの「ノリ」で楽しく演奏する事が出来たと言っています。
 氏は「クラシック音楽は、もともと教会音楽から派生したものなので、神や天使などが登場しますが、ことヴァイオリンに関しては、むしろ悪魔や魔女をモチーフにした曲やエピソードが多いようです」と述べて、タルティーニのソナタ「悪魔のトリル」を挙げています。そこで数十年ぶりにネットで聴いてみましたが、教会音楽をよく作曲したフランクのソナタにも似て心地よい響きがし、とても悪魔的には感じられませんでした。でも氏がそう考えた事で弦楽器の持ついわば二面性というものを学びました。
 嫉妬で精神状態のおかしくなっていたサウル王は、ダビデを召して立琴を弾かせましたが、その時は「音楽療法」が功を奏しました。
 「…悪い霊がサウルに臨むたびに、ダビデは立琴を手に取って、ひき、サウルは元気を回復して、良くなり、悪い霊は彼から離れた」(サムエル第一16:23)。
 しかし別の日にダビデが奏でた時は、途中でサウルが彼を目がけ、槍を突き刺そうとしたのです。
 「ダビデは琴を手にしてひいていた。サウルが槍でダビデを壁に突き刺そうとしたとき、ダビデはサウルから身を避けた…」(同19:9−10)。
 この時のサウルはタルティーニが言うように、弦楽器の「繊細な音色」「細い弦の間を縫うように奏される技巧」が、「悪魔のイメージ」をサウロに与えたのかも知れません。実際に演奏している方から良い話を聞きました。