ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

トランスポゾンの働きとドーキンス

 2011年9月19日の米国創造研究所(ICR)のサイト(http://www.icr.org/article/6382/)で、ブライアン・トーマス氏が「トランスポゾンの振る舞いは利己的遺伝子説を無視している」といった題で、小論文を書いています。
 リチャード・ドーキンスは行動生物学者、著書『利己的遺伝子』(1976年)で知られる進化論者でもあります。現代最大の無神論者として、キリスト教信仰を攻撃しています。
 利己的遺伝子については、一般に「遺伝子は自分自身をふやそうとするものであり、生物はそのための乗り物にすぎない」という考え方がよく採られていますが、実際にはドーキンスを深く読み込んでいないと、適切な定義にならなかったり、間違ったりしやすいそうです(http://openblog.meblog.biz/article/264778.html)。このブロガーの考え方を要約すると(私も間違うかも)、「主体(個体、遺伝子)は自己の利益を増すために(自己複製のために)行動する」というのが、ドーキンスの真意だそうです。 
 またトランスポゾンというのは「細胞内の染色体上をあちこち動く遺伝子」の事であると定義されています。実験でよく利用されるショウジョウバエに存在するP因子というのが、詳しく研究されているトランスポゾンの一つです。
 トランスポゾンは自己のコピーを植物でも動物でもDNAのうちに挿入し、その宿主となるゲノム(全遺伝子情報)を支配する事が出来るので、ドーキンスの描く利己的行動を証明しているという主張がされています。しかしトーマス氏は疑問を呈し、その答えはノーであると言っています。なぜならそうした遺伝的因子は、でたらめにゲノム中に侵入するのではなく、自己のコピーを染色体上の大変特殊な部位に挿入する事が分かったからです。
 トーマス氏はその例を示す為、上記P因子に関してR・A・ホスキンスらが最近米国科学アカデミー紀要に発表した論文(9月6日)と、カーネギー研究所がそのニュースで発表した論文(同)を紹介しています。
 それらによりますと、P因子の挿入は行き当たりばったりではなく、その位置はほとんどの事例で共通しており、DNA複製の開始位置であって、そこで機能しているという事です。このDNA複製機構とP因子との連関を考えてみると、P因子はDNA複製と調和して動く事が示されたわけです。
 要するにP因子は自己をどこに挿入すべきか「わきまえている」ので、その後は蛋白質の切断や特殊な低分子のRNAの仕組みにより、新たに動く事はなくなります。言い換えるとこのP因子と極めて正確に作用し合う宿主細胞側の良く練られた連携プレーがあるのです。
 もし動く遺伝子が本当に「利己的」であるなら、自己の数を増やす為には、場所の優先などあり得ず、ゲノム上のどにでも侵入する筈です。研究結果はそれを明確に否定しました。 
 また動く遺伝子のコピー数も制御を受けており、細胞の仕組みで最終的に停止してしまう事が分かりました。この仕組みはまるで動く遺伝子の挙動を正確に把握しているかのようです。
 結果として動く遺伝子が生き残り増殖する為、利己的にゲノムと競争するという事実(ドーキンスが描いているのはそれです)はなく、実際には宿主のゲノムと互いに協力して作用し合う事が示されたわけです。
 遺伝子は「利己的」でない振る舞いをしています。動く遺伝子でさえ利己的な兆候を示しません。それはひとえに天におられる卓越したデザイナーである神の周到な技術によるものです。