ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

高慢を捨てて弟子となった元東大病院老人科の医師辻さん

 今朝日新聞の夕刊のニッポン人・脈・記では、在宅医となった医師たちの事を紹介していますが、11月29日に辻彼南雄医師が登場しています。
 辻医師は北海道大学卒業後、群馬大学東京逓信病院を経て東京大学医学部老人科の医師となりました。ちょうどそれから5年経て、都内で診療所を営む佐藤智医師の書いた本の中にある「病気は自宅でなおす方がいい」という言葉に出会いました。
 佐藤医師は87歳、在宅医療の先駆者と呼ばれている人です。1980年に日本最初の在宅医療システム「ライフケアシステム」を立ち上げ、東京の水道橋東口で診療所を開いています。

 これは会員制の医療組織です。そう言いますと、富裕な人だけが利用出来ると私たちは考えてしまいますが、そのホームページを見ますと(http://home.lifecare-sys.jp/index.php?%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%BF)決してそんな事はありません。入会預り金として1世帯について1口5万円、2口以上を預け、会費は、原則として月額1口千円7口以上となっていて、減免制度もあります。勿論この会は健康保険の枠内だけでは十分な活動が出来ないので、朝日を見ますと、車用品を扱う「オートバックス」の特別顧問を務める住野勇氏などが支えています。
 この会は「自分たちの健康は自分たちで守る」「病気は家庭でなおすものである」という言葉を標語として掲げています。会員は普段この診療所で検診を受け、病気になれば自宅を佐藤医師が訪問して診察、必要に応じ看護師が毎日訪問し、その情報を佐藤医師が24時間待ち構えるようになっています。
 さてその佐藤医師の書いた本に刺激を受けた辻医師は、佐藤医師の診療所を訪れ、そこでアルバイトを始めました。しかし一人前の医師と自負していた辻医師は、そこで佐藤医師から「1ヶ月、僕の往診を見ていなさい」と告げられます。そこから弟子としての修行が始まったわけです。

 しかしこの師匠なかなか手厳しい、往診に当たり実にこと細かく弟子に注意をします。東大病院の時はどちらかと言えば横柄だった辻医師は、そこで師匠である佐藤医師から「ここの主人は、患者さんです。私たちは客なんだよ」と諭されたのです。
 そこで挫折し大学病院に戻ったままだったら、辻医師の今はないでしょう。しかし辻医師は高慢を砕かれ、へりくだりました。そこが偉いところです。
 ですから辻医師は大学病院のポストを投げ捨てて、佐藤医師の診療所の常勤医となりました。そして今も師匠の下研鑽を重ねているようです。
 イエス・キリストは「弟子は師以上には出られません。しかし十分訓練を受けた者はみな、自分の師ぐらいにはなるのです」(ルカ6:40)と言われましたが、今では辻医師はそこまで達したようです。
 実は聖書には辻医師と同じ経験をした弟子たちが多く登場しますが、ペテロなどは典型例です。ガリラヤの漁師だった彼はイエスから早く目を留められていましたが、決定的になったのは漁の場面です。彼はプロの漁師を自負していましたが、彼に勝るイエスの力をそこでまざまざと見せつけられ、高慢を打ち砕かれました。そして直ちに「何もかも捨てて、イエスに従った」(ルカ5:11)のです。
 しかしその後の彼はどちらかと言えば弟子として失敗を多くしでかしています。その際たるものはマタイ受難曲で有名な、十字架に向かわれる師匠の拒絶でした。しかしイエスの預言された鶏の鳴く声で我に帰り、さめざめと泣いて悔い改めました。
 そしてペンテコステの日、聖霊が天から下り、彼も他の弟子たちも大きな力を受けました。以後彼は殉教の死を遂げるまで師であるキリストに忠実に従いました。彼の力量は師匠に一歩近づいたのです。彼は新約聖書のペテロの手紙第一、第二で世に不滅の名を残しました。