ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

ロバート・ライシュの『余震 そして中間層がいなくなる』を読んで

 米国のハフィントン・ポストサイトを見ていると、時々ロバート・ライシュ教授(カリフォルニア大学バークレー校)が寄稿しているのを見かけます。経済学の専門家ですが、わかりやすい英文で病める米国や日本の経済問題を解説しています。ニューヨーク・タイムズで常連のポール・クルーグマン教授の主張とも似ており、時間の許す限りで読んでいます。
 上記の本を図書館で借りたのですが実に豊かな内容でした。ネットで調べると、この本の要約まで記している人がいます(http://workshop.blog.shinobi.jp/)。従ってこれから読んでみたい方は、だいたいの内容をこの要約から知る事が出来ます。
 私が学んだ箇所は多いですが、特に絞って見ますと、その第1章で、米国連邦準備制度理事会FRB)の議長を1934〜1948年まで務めたマリナー・エクルズという人が登場している事です。
 「1929年10月、ユーヨーク株式市場(ウオール街)での株価の暴落から、アメリカ合衆国は空前の恐慌におそわれた…」(山川世界史)で始まる世界恐慌ですが、その復興策としてルーズヴェルト大統領が先頭に立って行なったニューディール政策や、英国で大胆な政策を提言したケインズ位までは知っていましたが、このエクルズという人の名前は全く初めてでした。
 ライシュ教授がなぜこの人を評価するのかと言えば、彼は「一九二九年の大恐慌の経済的諸要因を分析したが、その内容は際立って、というか不気味なまでに、二〇〇八年の世界経済危機にも当てはまる」からです。2008年は世界的な金融危機を招いたリーマン・ショックの起きた年です。
 エクルズは恐慌時既に財界の大物であり、その事業も多角化させていたので、あまり影響はなかったのですが、一段と悪化する経済状況に打つ手がなく、「見出しえたのは絶望のみ」でした。
 しかし彼はルーズベルトに呼び出され、FRB議長として熱心に経済復興策を講じました。彼が分析した恐慌の主因は、「一握りの富裕層のもとに膨大な所得が蓄積され、他の階層の購買力を吸い上げてしまった」という事でした。それをライシュ教授は「これこそがエクルズの最重要な考察であり、二〇〇七年末に始まった世界経済危機の解明にそのまま援用しうるものである」と、正当に評価したのでした。
 実際1928年(恐慌の1年前)、最上位1パーセントの所得の全体比は23パーセント、2007年も同じ23パーセントです。所得増の大半が「一握りの富裕層」に吸い上げられています。
 エクルズは29年以降中間層が急激に弱体化している事を見取り、次々と政策を出して実行に及んだ為、富裕層の割合は減ったものの、中間層の安定と共に全体の経済も落ち着いたのでした。
 ところが2007年以降の事になると、政府が大胆で有効な政策を打ち出していないので、中間層が大きな負債を負って、どんどん没落しており、このままでは「いなくな」ってしまいます。1930年代の経験を踏まえたより重大な教訓を得ない限り、この書の題にもなっていますが、「私たちは、高失業率、低賃金、怒りを募らせる中間層という世界経済危機の余震を抱え続けていかなくてはならない」のです。この怒りを募らせている中間層が貧困層と共に、「占拠せよ!」の運動に関わっているのは間違いないでしょう。
 では日本の場合はどうか。ライシュ教授は「日本語版に寄せて」の中で、2011年3月の東日本大震災までに財政赤字が、危険なまでに高い水準にあった為、この震災を契機に、米国と同様富裕層と貧困層への2極文化が進む中、「政府が経済格差の拡大を抑止し解消する政策」を取れずに失敗するなら、それこそ「国家の危機」に陥ると警告しています。
 ライシュ教授は最後に幾つかの具体的な提言を行なっていますが、その中に「提言3 富裕層の最高税率の引き上げ」というのがありました。今オバマ政権はこれを巡って共和党と鎬を削っているようです。
 でも日本の野田政権は財務省役人の言いなりで消費税の大増税を断行しようとしており、経済危機は間近に迫っていると確信します。そうならないよう、ローマ書の規定に従い、政府の良い施策の為に祈らなければならないと思っています。私はれっきとした貧困層ですが、最後まで聖書の神の「施策」により頼むつもりです。
 聖書から言える事は次の通りです。
 「昔あったものは、これからもあり、昔起こったことは、これからも起こる。日の下には新しいものは一つもない」(伝道1:9)。
 「私は再び、日の下で行なわれるいっさいのしいたげを見た。見よ、しいたげられている者の涙を。彼らには慰める者がいない。しいたげる者が権力をふるう。しかし、彼らには慰める者がいない」(伝道4:1)。