ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

健康格差時代に生きる

 2003年に世界保健機構(WHO)は『健康の社会的決定要因』という報告の第二版を出しました。リチャード・ウイルキンソンとマイケル・マーモットの2人が纏めています。それはPDFファイルで見られますが、33ページもあります(e81384 social determinants of health.pdf)。その副題は「確固たる事実」というもので、既にウイキペディアの日本語版にも概略が載っています。その社会的要因として、1社会格差、2ストレス、3幼少期、4社会的排除、5労働、6失業、7社会的支援、8薬物依存、9食品、10交通が取り上げられ、詳述されています。
 私は図書館で金堂克則著『「健康格差社会」を生き抜く』という本を借りて読みましたが、その第一章「『健康格差社会』日本」の中で、上記の報告書を見つけました。近藤氏によれば、「健康格差」「健康不平等問題」はまず海外で大きな関心を集め、いろいろな指標でみた社会経済的地位が低いほど、不健康や死亡が多いという事です。WHOは1998年に上記題の報告書第一版を出しましたが、その後も研究は活発で、そうした論文を踏まえ、第二版で様々な批判に対する反証として「確固たる事実」を書き記したわけです。そしてその海外の影響を受け、今や日本でも「健康格差社会」に入っている事を近藤氏は指摘しています。
 近藤氏の本の第一章ではまず愛知老年学的評価研究企画のデータを紹介しています。要介護認定を受けていない高齢者32,891人を対象に、「お金持ち」とそうでない人々を比較して見ますと、お金持ちの特徴1転びにくい、2よく眠る、3明るいー鬱が少ない、4要介護リスクや虐待が少ない、5元気で長生きー要介護状態も少ない、6死亡率が低いなどとなっています。だいたい納得です。
 そこで所得が分かる介護保険料区分を用いてデータを作成すると、男性高所得者に対して、男性低所得者の死亡率は実に3倍以上になるそうです。男女間では有意な差はないとの事ですが、女性だけで見れば、やはり高所得者に対して、低所得者の死亡率は2倍ほどになります。
 所得格差についての意見はまちまちでしょうが、こと健康格差になると、それは「悪い格差」であると認める人が大部分です。「いのちの格差」に結び付くからです。従ってこれは放置出来ない格差になります。
 しかし東日本大震災以後、この健康格差はさらに深刻になっているのではないかと思います。十分な所得も無く、住む場所も奪われたお年寄りが、絶望して自殺する事例、また援助が行き渡らない状態で孤独死する事例、適切な病院やケア施設に入れず、慢性疾患などで死ぬ事例等々がどんどん増えて行くような気がします。
 さまに今は高所得者ほど安全な場所に逃げ手厚い医療を受けて丈夫であり、低所得者ほど医者にかかるだけのお金もないという「健康格差」社会になっています。

 イエス・キリストはこう言われました。
 「医者を必要とするのは丈夫な者ではなく、病人です」(ルカ5:31)。
  ここで丈夫な者とは当時の支配階級である律法学者やパリサイ人らの事です。実は彼らは自らを健全と称し、キリストを信じる事なく「霊的に死んだ」状態に陥っていました。一方病人とは取税人とか罪人といったユダヤ社会で除け者にされていたけれど、自らは「罪深い」事を自覚していた人々の事だと言えます。自己の罪が分かる人々に、キリストは救いの手を差し伸べられたのでした。
 上記の高所得者も同じです。「金持ちが神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい」(マタイ19:24)からです。低所得者はどうか?これは一概には言えません。お金に汲々としていれば、あまり関心がキリストに向かないかも知れません。
 私もその健康格差をもろに受けていますが、未信仰で死んだ金持ちよりも、信仰を持ちながら全身おできの貧乏人だったラザロ(ルカ16)の生き方を選択します。召される「時」はキリストが握っておられるわけですから、死亡率云々ではなく全てを委ねてその時を待つのみです。