ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

東京における「階級都市」の形成

 私は東京の山の手に属する杉並区の生まれです。亡くなった父母は戦前下町にあって一生懸命働き、昭和のはじめに山の手の中古の広い家を手に入れました。
 幼い頃この一帯が、高級軍人や東大教授などの住む場所であった事を知らされました。西荻窪から三鷹台に至る所は、戦後の風情を残している閑静な住宅街で、今下町にどんどん進出している高級マンションなどが、この一帯に入り込む余地はありません。
 確かに山の手と下町の違いはずっとありましたが、小さい頃連れて行ってもらった上野の周辺や、29歳の頃勤めていた会社の相棒が祭り好きで、良く葛飾とかみこしを担ぎに行かされたものでした。下町独特の雰囲気は大いに惹かれましたが、およそ差別意識など生じる余地はありませんでした。
 ところが図書館で橋本健二著『階級都市』を借りて読んだところ、現在東京が急速に変貌し、古き良き下町が破壊され、都心の大企業に勤める新中間階級向けの高級マンションがどんどん出来ている事が分かりました。下左図はグーグルの不動産サイトからお借りしました。月島で僅かに残る古い家々と高級マンションです。

 この本では橋本氏が山の手と下町の資産状況を資料を駆使して比較し、また自ら歩いてそこに見られる厳然たる格差などを考察しています。墨田・北・荒川・板橋・足立・葛飾・江戸川の下町はかなり資産が低くなっています。また命の格差も歴然としているそうです。
 山の手の高台とそこから下って行き下町に到達する坂などの考察を橋本氏は詳しく行なっていますが、読んでいてなかなか楽しかったです。そう言えば評論家の川本三郎氏も、よく東京の町を歩いて本にしています。私は今余裕がありませんが、この本の道案内で歩いてみたいと思ったのは、東大のある本郷から白山、千駄木、根津といった坂を下ったところにある下町です。根津と千駄木は地下鉄千代田線の停まる駅でもありますから、その気になれば歩けると思っています。昔iireiさんはどんなコースを散策されたのか、興味津々です。
 ところで現代急激に進んでいる所得格差は、上記山の手と下町という構図の中だけでなく、月島のように下町の昔ながらの家々と高級マンションといった、視覚的によく分かる光景の中でも進んでおり、住民間のいざこざが結構生じているそうです。また山の手であっても、世田谷区などのように、高級住宅地と低所得層の住宅が入り混じるモザイク状の所もあります。
 こうした格差による都市構造の変化については、エンゲルスも既に触れていたそうです。今それが狭い東京で極限にまで達する勢いとなっているようです。それについて橋本氏は、そうした居住分化は好ましい状況ではなく、多様な住民構成が良いと言っています。そうでないと、「人々は互いに敵意を抱きやすくなり、犯罪が増加し、ストレスはさらに高まる」ようになるからです。階級都市から交雑都市への転換、これを山本氏は望んでいますが、果たしてどうでしょうか?
 聖書では今の時代について、こんな事を言っています。
 「また、そのときは、人々が大ぜいつまずき、互いに裏切り、憎み合います…不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります。」(マタイ24:10,12)。
 それが持続して終末に向かうので、山の手の人々と下町の人々、下町の富裕な人々とそうでない人々との自由な交流は幻想だと思います。