ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

戦争の危機に立っているシリアのアレッポ

 2012年7月28日のタイム誌電子版(http://world.time.com/2012/07/27/brief-history-of-aleppo-a-great-world-city-now-in-the-grip-of-war/)に、「アレッポの短い歴史:世界の一大都市が戦争の危機にある」という題で、記事が書かれていました。
 アレッポはシリア北部の都市で、首都ダマスカスから350キロ離れたところにあります。人口250万人ほどです。世界遺産ともなっている都市です。

 このアレッポですが、タイム誌ではその短い歴史を追っています。別サイトで簡単に羅列すると、ヒッタイトアッシリア、アラブ、モンゴル、エジプトのマムルーク朝オスマン帝国などに、次々と支配されて来た複雑な歴史があります。右下図はアレッポ城、ネットからお借りしました。

 現在シリアは深刻な内戦状態になっていますが、アサド政府軍と反体制派武装組織が共にここに集結しつつあり、既に一部の地域で散発的な戦闘が行われています。本格的な戦闘になるのは時間の問題でしょう。反体制派のある幹部によると、そうなってもアレッポはせいぜい持って1ヶ月ほどだそうです。
 そうなるとこの世界遺産カンボジア紛争の時のように、大破壊となるでしょう。何とか平和的な解決が出来ないかと危惧しています。
 私がタイム誌の記事に注目したのは、ここが歴史的に見ても、諸宗派の集まっている都市であり、著名で繁栄していたユダヤ人の共同体(シナゴーグ=会堂を中心とした)もあったからです。その会堂ではユダヤ人の筆記者たちが、聖書を書き写して来ましたが、930年頃ベン・アシュルという人が、旧約聖書全体にわたる最古の写本を完成させました。現在アレッポ写本として最もよく知られている、ヘブル語聖書の写本です。

 ユダヤ人たちはアレッポでその写本を大切に守って来ましたが、1948年イスラエル建国の際、アレッポでは彼らに対する暴動が起こり、貴重なアレッポ写本の4分の1が喪失しました。残りは現在エルサレムヘブライ大学に保管されています。
 ベン・アシュルの写本を元に、やはり旧約全巻を完成させたサムエル・ベン・ヤコブという人のものを底本としたのが、現在レニグラード写本として知られるビブリア・ヘブライカ・シュトットガルテンシア(BHS)で、キリスト教専門書店で販売されています。私も持っています。
 ですから聖書の存続という事では、何の支障もありませんが、アレッポ写本の全体が残っていないのが惜しまれます。
 この写本の一部を新宿で行われた聖書展で見た事がありますが、鋭いペン先でしっかり書かれており、アドナーイと読む4文字を私も読み取る事が出来ました。彼らは一箇所でも書き損ねると、全てを破棄し、一から始めると言われています。新約のギリシャ語写本は、大きく2つに分かれています(ネストレ=アラント編集のものと、公認本文と呼ばれているもの)。しかし旧約のヘブル語本文は、ほぼ完璧に保護されて来ました。改めて次のみことばが浮かんで来ます。
 「草は枯れ、花はしぼむ。だが、私たちの神のことばは永遠に立つ」(イザヤ40:8)。
 アレッポという世界遺産が是非残るよう祈るばかりです。