ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

嗅覚の遮断と脳の処理と速やかな回復

 2012年8月12日のネイチャー神経科学誌に「嗅覚受容体への入力は人間の眼窩前頭皮質における匂いの質の信号を維持するのに重要である」といった難しい題の論文が載っていました(http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/full/nn.3186.html)。いつものように概略だけで、サイエンスデイリ誌がやや詳しく紹介しています。
 発表したのはノースウエスタン大学のケン・ネイ・ウー氏ら5人の研究者たちです。
 嗅覚系は広範な花粉によるアレルギーや風邪のウイルスなどにより、感覚遮断をうけやすくなります。あまり匂いを嗅ぐ事が出来なくなります。そうした状況で脳はどのように匂いの情報を変換・維持しているのでしょうか?
 研究者たちは機能核磁気共鳴断層装置(fMRI)を使って、いろいろ分析してみました。実験的に14人の人の鼻を1週間塞いでみましたが、その後脳の活動は嗅覚に関わる脳の領域(*梨状皮質や眼窩前頭皮質)で急激に変化しました。それは脳がこの大切な感覚の妨げに対し「埋め合わせをしている」事を示しています。それで脳の活動は自由な呼吸が回復した後すぐ正常な形に戻りました。以前の研究ではそこまで分かっていませんでした。

 ウー氏は「鼻が塞がれると、脳は情報の欠如に対して適応しようとします。ですから嗅覚系が壊れる事はありません。脳は情報欠如の埋め合わせをしますから、匂いの感覚が戻った時、ちゃんと使えるようになります」と言っています。
 こうした急激な反転作用は、視覚、聴覚、味覚など他の感覚系とは全く異なっています。これらは感覚遮断により顕著な長期にわたる影響が出ます。
 嗅覚系が機敏な作動をするのは、上記のようにウイルスやアレルギーによる匂いの遮断が普通に起きているからという事になります。
 こうしたかぎとなる嗅覚系脳の領域における一時的な変化は、乱された感覚受容体の入力を受けて、匂いの知覚の全体性を保つのに役立っているのが分かったわけです。
 嗅覚の遮断と脳の処理と速やかな回復がこうした研究で示されました。
 感覚器のうち嗅覚だけが可逆性或いは可塑性があるというのは面白いですが、考えてみますと、味覚も聴覚も視覚もウイルス感染やアレルギーにほとんど関与していない事を考えれば当然なのかも知れません。
 聖書で考えてみますと、特に旧約時代、人々は罪の贖いとして動物を携えて祭壇の所にやって来ました。そこで動物はほふられ、その全体または脂肪などが祭壇で焼かれました。そしてその香りのよい煙が天まで届き、あたかも人間のようにその匂いを嗅いだ神は、それをよしとし、罪を赦されたのです。傷のない動物のいけにえは神にとっても人間にとっても大切な事でした。味覚、聴覚などが欠如していても、いけにえは捧げられます。しかし傷のある動物は嗅覚が正常でないと、視覚と共になかなか気づきません。それをそのまま捧げるのは罪でした。
 またその動物のいけにえによる良い香りは、しばしば私たちの捧げる祈りを指しています。それを見ると、神は嗅覚を特に重んじられたような気がします。
 「私の祈りが、御前への香として、私が手を上げることが、夕べのささげ物として立ち上がりますように」(詩141:2)。