ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

開沼博氏の『フクシマ論』を読んで

 2012年8月の終わり近く、やっと予約していた上記の本を図書館で借りて読む事が出来ました。かなり分厚い本です。相当時間がかかりました。
 この本は多くのブログ仲間から推奨されていたもので、特にさとすけさんのブログ(http://d.hatena.ne.jp/satosuke-428125/20110906/1315309817)で詳しく紹介されています。ネットでは開沼氏の評価が若干分かれているようですが、このブログは私としては優れた紹介だと思っています。
 それでそこに書かれていない事で、今後福島が中央→地方→ムラの縦社会の中でどう変容してゆくのか、若干考えた事を補足してみたいと思います。
 それは昨年7月26日にブログで取り上げた佐藤栄佐久氏をめぐる問題です(http://d.hatena.ne.jp/hatehei666/20110726/1311658391)。
 第二章で開沼氏は「佐藤栄佐久県政ー保守本流であるがゆえの反原子力」という題で、詳しく佐藤氏の動きを追っています。

 佐藤氏は1988年から2006年まで県知事を務め、その後現在の佐藤雄平知事に交代しました。
 1988年就任当時佐藤氏は「国の言うことに従っておけば、間違うことはない」という考え方に基づき、国の原子力行政に異議を唱える事はありませんでした。従って中央→原子力ムラの狭間にあって、国と協力しつつ県知事としての自らの理念を実行してゆこうという意気込みがあったようです。
 ところがその後中央で画策されている事に、県が口出しする権限がないという点を思い知らされ、原子力に対する国のいい加減な安全策に対して次第に不信感を抱くようになりました。
 そして高速増殖炉もんじゅの深刻な事故(1996年)でその稼働が不可能になると、国はプルトニウムの処理方法として「プルサーマル計画」を提示し、福島での実施を要求して来ました。その時点では佐藤氏はまだそれを受け入れていました。しかしそこで使用されるMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)の未成熟に鑑み、国はこの計画の延期を県に通達して来ました。それ以来佐藤氏と国との信頼関係は崩れました。中央と原子力ムラを結ぶ執り成し役としての役割を佐藤氏は破棄し、以後国・東電・財界を敵に廻して四面楚歌の状態になりました。
 佐藤氏自らそして県もこのプルサーマル計画の事をよく勉強し、中央と鋭く対峙するようになりました。それは国→県→市町村→住民という従来の縦関係を崩して行く動きとなりました。ちょうど地方分権一括法が2000年に施行され、これまでの縦関係が、憲法でも保障されている横関係へと移行して行きました。
 窮地に立たされた中央は、佐藤氏憎しと徐々に怒りといらだちを募らせて行きました。破局は2006年9月実弟が関与した汚職事件の追及を受け、県知事を辞職した事で生じました。ちょうどその頃は小泉内閣の終盤で、次期安倍内閣に代わろうとしている時期でした。佐藤氏の『知事抹殺』を読むと、これは国の原子力政策に反抗する佐藤氏を辞めさせる為の罠だったとの思いを深めています。佐藤氏自ら罪を犯したという物証がない上に、取り調べたのが、あの村木厚子元厚労局長の罪をでっちあげた前田検事だった事も、その蓋然性を深めています。ただ「佐藤知事は日本にとってよろしくない、抹殺する」と発言したのは、当時の東京地検特捜部検事森本宏氏だったそうです。
 そして県知事は佐藤雄平氏に代わり、国の念願していたプルサーマル計画を受け入れました。それが2010年の福島原発3号機で実現したわけですが、翌年の事故で頓挫しました。
 この迅速な転換を開沼氏は地域共同体の「原子力ムラ」、中央の「原子力ムラ」という二つの原子力ムラの強固な保守性の為と捉えています。さらに佐藤雄平氏という、国にとって毒にも益にもならない存在も関わっています。福島県政は今混沌としています。
 以上開沼氏の本の第二章を主体に纏めてみました。

 この構図は実は聖書で言うと、中央=エルサレム、ムラ=ガリラヤ地方、両者の間にあって、中央の学者・パリサイ人といった人々に偽善者のレッテルを貼ったイエス・キリストという仲介的存在に似ています。このムラの共同体も実はそこが故郷であるキリストを受け入れませんでした。そして中央に逆らったキリストは、十字架で処刑されてしまいます。しかしキリストの「抹殺」でその福音は途切れたのではなく、復活後かえって地方の隅々まで拡大していったのです。
「しかし、聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレムユダヤとサマリヤの全土、および地の果てにまで、わたしの証人となります」(使徒1:8)。
 大飯原発のある福井県では西川一誠知事が簡単に再稼働を認めてしまいました。佐藤栄佐久氏の裁判勝利と復活を強く願うものです。福島再生の為には気骨あるこの人がまだ必要とされていると信じます。