ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

領土問題をめぐる中国や韓国との緊張関係について 脱亜論批判

 ここのところ尖閣諸島及び竹島と領土問題が突然浮上し、私としてもどう捉えるべきかずっと悩んでいました。
 そんな中、はてなブログでcangaelさんが9月4日福沢諭吉の『脱亜論』に触れておられ(http://d.hatena.ne.jp/cangael/20120903/1346649171)、iireiさんのコメントとブログ紹介があって、私も図書館で借りて読みながら考えていました。ネットでもそれを肯定的に捉える人、やや否定的に捉える人がいて、聖書からならどんな解釈が可能かと思っていました。

 まず脱亜論という極めて短い文章から私が問題にしたのは、「然るに爰に不幸なるは、近隣に国あり、一を支那と云ひ、一を朝鮮と云ふ。此二国の人民も、古来亜細亜流の政教風俗に養はるゝこと、我日本国民に事ならずと雖ども。其人種の由来を殊にするか、但しは同様の政教風俗中に居ながらも、遺伝教育の旨に同じからざる所のものある歟…道徳さへ地を払ふて残刻不廉恥を極め、尚傲然として自省の念なき者の如し」とある部分です。
 ここで諭吉は「人種の由来を殊にするか」とか「遺伝教育」うんぬんといった言葉を用いています。私はこれを大いに問題とします。
 使徒行伝17:26に「神は、ひとりの人からすべての国の人々を造り出して、地の全面に住まわせ…」とあります。ひとりの人が創世記のアダムを指しているのは明らかです。国=エスノス=国民、民族です。このアダムが罪を犯し、その子孫に暴虐が満ちた頃、ノアの洪水が起き、箱舟に乗ったノア、セム、ハム、ヤペテとその妻たち8人を除き、人々は全滅しました。遺伝子プール(洪水以前の全集団の所有していた遺伝子の総体)が激減したものの、またボトルネック効果で、その子孫に遺伝的多様性の低い集団が出来ました。この集団がバベルで世界中に散ってゆき、遺伝的多様性の高い民族となってゆきます。
 ところでアララテの山に上陸したノアは、ブドウ酒に酔って裸になり、大きな罪を犯し、息子のハムが目撃しました。その時ノアは謎の言葉を発しました。「のろわれよ。カナン。兄弟たちのしもべとなれ…ほめたたえよ。セムの神、主を。カナンは彼らのしもべとなれ。神がヤペテを広げ、セムの天幕に住まわせるように。カナンは彼らのしもべとなれ」(創世9:25−27)。
 実は呪われるべきは、父の裸を見たハムでしたが、ノアはハムの息子カナンを呪いました。創世10の諸民族の系譜を見ますと、ハムが生んだ子はクシュ(*エチオピア)、ミツライム(エジプト)、プテ(*リビア)、カナン(パレスチナ主体)の4人で、確かに黒人の多いアフリカに住んでいます。カナンだけが例外です。彼はその罪がはなはだ重く、イスラエルが約束地で滅ぼすべき異民族(ヘテ、エブス、エモリ等)の父祖を生み、その領土に悪名高いソドム、ゴモラも含まれていました。しかし聖書では他の3人について特に悪い評判があったとは書いていません。従ってノアが霊的に見通したのは、自分と同じ恥ずべき罪を犯す事になるカナンとその子孫を特定しての事です。ソドム人は男色で有名であり、神の裁きの対象となった地でした。
 それに対してセムの子孫は、ユダヤ人・アラブ人・シリア人・トルコ人・中国人など、有色アジア人種・モンゴロイドの祖であり、ヤペテの子孫はアーリア人アングロサクソン人(*特に英国人)・ギリシャ人・スラブ人・ペルシャ人など、白人系コーカソイドの祖となりました。
 また創造論研究者の間では、黒人とか白人とか言われる肌の違いは、メラニン色素の多寡によるものとしており、バベル以後そうした遺伝的多様性が広まったのは間違いないでしょう。しかし彼らの関係は諸民族の違いで、特にどの部族が優れ、どの部族が劣っているという事はありませんでした。奴隷制を生んだのは、ハムの子ミツライム(エジプト)あたりが本格的で、出エジプト記にも、イスラエルを奴隷として扱った記事があります。
 故に黒人の肌の色は、ハムとその子孫への呪いの結果であるとは、聖書のどこにも書かれていません。カナンの肌はおそらく褐色だったでしょう。人種主義とか差別は、聖書とは一切無関係です。
 では福沢諭吉が取り上げている「人種」とか「遺伝教育」の源流はどこにあるかと言いますと、ちょうど彼の生きた時代に重なるチャールズ・ダーウインの『種の起源』が出た1859年がはじめです。

 そこにはスペンサーが初めて用い、ダーウインが進化論の主体とした「最適者生存」の思想がはっきり見てとれます。それはまた20数年後優生学とも結び付きました(人類の品質をより良くするため「遺伝的素質を改良する目的で」、悪い血筋を絶やし「悪質の遺伝形質を淘汰」、優良なものだけを保存していこうとする学問)。福沢の「遺伝教育」という言葉には、きっとこの優生学が背景にあると思います。
 こうして白人は優れ、黒人は劣っているという人種差別は、1925年までに米国の学生たちに教えられ浸透して行きました。遺伝子は知的能力への主要な役割を果たしているという事になります。
 そして1950年生まれの米国白人デイヴィッド・デュークが、ダーウイン主義に基づく最大の人種差別主義者の一人となりました。そうした事実からしても、現在の米国保守派の白人信徒と称する人は、露わな黒人差別をしており、本当に信徒であるか極めて疑問です。
 ところで日本人、中国人、韓国人はセム系か、ハム系か、ヤペテ系かというと、一概にこうだとは言えませんが、聖書の観点からは民族としての優劣は存在しません。遺伝子プールを考えても同じです。
 すると福沢の脱亜論を根拠に尖閣竹島に来る中国人・韓国人を「傲然として自省の念なき者」として排斥しようとする動きは、極めて危険です。私は福沢諭吉の全ての本を読んで研究したわけではないので、一冊の本から独断的にこうだとは言えませんが、この脱亜論はダーウイン主義に基づく危ない書であるように思います。