ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

流通ジャーナリスト金子哲雄氏の早過ぎた死

 「生まれるのに時があり、死ぬのに時がある。植えるのに時があり、植えた物を引き抜くのに時がある」(伝道3:2)。
 「そのころ、ヒゼキヤは病気になって死にかかっていた。そこへ、アモツの子、預言者イザヤが来て、彼に言った。「【主】はこう仰せられます。『あなたの家を整理せよ。あなたは死ぬ。直らない。』」(イザヤ38:1)。
 
 私が通っている教会の医師をしている会員の方から、金子哲雄著『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』という本を借りて読みました。
 金子氏はテレビを見ている方ならよくご存じでしょうが(「ホンマでっか!?TV」などに出演)、私は全く知りませんでした。1971年生まれ、慶応大学を出て流通ジャーナリストになった人です。

 金子氏は他の会社の忙しい正社員に劣らず「仕事中毒」の人でした。この本にも2011年6月のスケジュール表が載っていましたが、「我ながら超人的なスケジュール」と自ら言うように、すごい仕事ぶりでした。1日16時間労働は当たり前、睡眠4時間あればいいほうというのは、もうむちゃくちゃで、身体を壊さないほうが不思議な位でした。
 プロローグにもありますが、その1月前の5月にニューヨークのバイクに関わるイベントに参加し、「がんばって仕事するぞ!!私は、やる気に満ちていた」とあるほどの気概を持っていました。ところがその前年から正体不明の咳に悩まされていました。この原因を突き止めようと、近所のクリニックを訪れました。結果は「末期の肺がん」。全身から力が抜けて行くのが分かりました。まだ40歳の若さです。
 それで金子氏は紹介されたがん専門の病院に行き、病理検査を受けました。その結果肺がんと言われたものの正体は、「肺カルチノイド」というものでした。私たちにもあまりなじみのない病名です。悪性の腫瘍が身体を蝕むもので、既に肝臓や骨にまで転移していました。
 金子氏のタイプの腫瘍は現在治療法が全くないそうです。肺の巨大な腫瘍が気管を圧迫していて、咳が止まらなかった事も分かりましたが、それにより今すぐ死んでも不思議ではないと、医者に宣告されました。他の医者にも訊いてみようとしましたが、有効な治療法が無い以上全て断られました。「衝撃と怒りを感じ、妻と泣いた夜もあった」と、金子氏は回顧していました。
 でもまだ生きて仕事をしたいという金子氏は、他にも様々なクリニックを探し求め、そこで何か有効な治療法がないか模索しています。しかしその間も仕事は次から次へと入り、無理を押しての出勤は身体の状態を急速に悪化させて行きます。最終的に覚悟を決めたのは自宅に近いNクリニックで、「在宅最終医療」も行っていました。
 そんな頃「ホンマでっか!?TV」沖縄ロケの仕事が舞い込みましたが、この時期飛行機に乗るのは危険という事で諦めざるを得なくなり、4日間も泣き続けたそうです。
 最後は在宅治療に専念し、迫る死を受け入れ遺書や葬儀の手順まで自ら決めて、2012年10月41歳で亡くなりました。
 この本は改めていろいろな事を教えてくれましたが、痛切に感じたのは「あなたがたのうちだれが、心配したからといって、自分のいのちを少しでも伸ばすことができますか」というイエス・キリストの問いです。そのように人間の死の時を決めるのは、他でもない神だけです。
 ですから上記の聖書箇所でヒゼキヤ王が、突然の死の宣告により「大声で泣いた」のも、生涯の半ばでまだその時ではないという自分の思いがあったからでしょう。この王の嘆きは、金子氏にも通じます。
 さらに神は「あなたの家を整理せよ」と言われました。これはもう死を覚悟して、金子氏のように身辺の事を全て整理して、後に禍根を残さないようにとの忠告だったでしょう。
 私たちはいつ死ぬか分かりません。まだ若いから大丈夫などとは決して言えないはずです。ですから日頃死を思い(=メメント・モリ)ある程度の備えをしておくのは大切な事です。そして金子氏が多くの医者に見放されたように、人間という医者の力にも限界がありますから、最後の拠り所はやはり己の信じる宗教という事になるのではないですか?
 日本人はその事を忘れてしまい、或いは考えないでいる為、ある日突然死を宣告され慌てふためくのです。今日明日にでも死ぬという事を自覚していれば、次にその残された人生をいかに充実した形で過ごすべきか考えるようになり、生活の質が向上して安らかな死を迎えられるのではないでしょうか。