ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

ベネズエラ大統領ウゴ・チャベス大統領の死と米国

 「こうして、ダビデは彼の先祖たちとともに眠り、ダビデの町に葬られた。 ダビデイスラエルの王であった期間は四十年であった。ヘブロンで七年治め、エルサレムで三十三年治めた」(列王第一2:10,11)。
 2013年3月6日の朝日新聞夕刊では、ベネズエラ大統領チャベス大統領が癌にて58歳で死亡した事を伝えていました。この記事は欧米でも広く報じられました。

 南米の国ベネズエラについては、普段私たちはあまり知りませんし、ニュースが飛び込んで来ても、無視してしまうかもしれません。
 しかし私たちは今ナオミ・クラインという人の「ショック・ドクトリン」という言葉を知っています。副題に「災害資本主義の勃興」となっていますが、それが様々な日本語で流れています(私は青空学園だよりのnankaiさん<http://d.hatena.ne.jp/nankai/>から英文のペーパーバックを贈呈して頂き、感謝をもって読み続けています)。
 そのベネズエラの歴史の古いところは省き、比較的新しいところから見て行きますと、20世紀始めマラカイボで世界最大級の油田が見つかって以来、それまでの貧しい国は一変します。その豊富な石油収入が国を潤し20世紀半ばにキリスト教社会党と、国民行動党による二大政党制が良く機能しました。その為軍事独裁政権が多い南米にあって、20世紀後半は民主政治が行き渡っていたようです。しかしその中でも貧富の格差は生まれますし、経済的苦境も生じた為、1999年貧困層の救済を政治目標として掲げたチャベス元陸軍中佐が、大統領選挙に立候補して当選しました。
 これが軍事家から政治家に転身したチャベス大統領の出発点でした。しかしその急激な貧困対策は国の富裕層などの反感を買い、以後紆余曲折の時代が続きましたが(失敗したものの米国CIAの支援を受けた軍部によるクーデターもありました=第一次ショックドクトリン)、2006年に大統領選に再選されて以来明確に反米主義を掲げ、周辺諸国左翼陣営のカリスマ的存在となりました。
 その年の国連総会では、前日演説したブッシュ大統領を強烈に非難しました。ハフポストサイトによると、チャベスはブッシュを「帝国主義の代弁者」と呼び、「昨日ここに悪魔が来た」「今日なお硫黄の匂い(=腐った匂い)がする」などと発言しています。
 2007年社会主義体制に移行し、石油輸出により周辺諸国の支援を行って来ました。対象国は左派系のボリビアエクアドルウルグアイ、そして社会主義国キューバなどです。
 またチャベス大統領はその頃から原油の採掘・生産を国有化し、米国エクソンモービルなどの資産を接収しました。さらに貧困層の為に読み書きを教える講座を作り、健康管理に力を注ぎ、職業訓練を促進しました。石油収入の40パーセントを越える政府財政支出で、それらが可能となりました。一方でこうした「ばらまき経済」と周辺諸国への無償支援継続により、次第に経済が悪化して行きました。
 こうした措置に米国と親米派の富裕層が座視している筈がありません。カリスマ的な大統領の死で、次期大統領選では後継者は苦戦が予想されます。米国は虎視眈々とチャベス後のシナリオを描いています。朝日に載ったオバマ米政府の声明では、ベネズエラの「民主化」「人権状況の改善」に力を注ぎ、ベネズエラ国民を「支援」して、同国政府との建設的関係の構築を目指しています。
 これこそ米国が反米の急先鋒チャベスの死(大半の国民が「ショック」を受けて悲しんでいます)と、ベネズエラの経済悪化に乗じて乗り込み、国有化された石油会社を取り戻し、貧困層を切り捨てる「第二次ショック・ドクトリン」の近未来的粗描に他ならないでしょう。「民主化」「人権」と言葉は良いですが、実態は富裕層の為のものでしかありません。ナオミ・クラインチャベスの名を挙げていますが、さぞ心配している事でしょう。