ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

孫崎享氏の『日本の国境問題』から学んだ事

 「あなたの先祖が立てた昔からの地境を移してはならない」(箴言22:28)。
 「仲介者は一方だけに属するものではありません…」(ガラテヤ3:20)。

 この本の冒頭にあるように、2010年は「東アジアでは領土問題をめぐり、大きく動いた」年になりました。尖閣諸島竹島北方領土を巡り、ロシア、中国、韓国が踏み込んで来たので、否応なくその問題に直面する事になったからです。それまで棚上げされていたのに、俄然緊張が高まりました。

 しかしこの問題も、原発の小出助教のように、信頼出来る専門家の意見に耳を傾ける事が大切だと思いました。その点孫崎氏は『戦後史の正体』など精力的な執筆活動を続けており、外務省生え抜き、退官してからも防衛大学教授を務め、この種の情報入手では抜きん出た立場にある人と考え、この本の主張から学びをしました。結果はやはり手堅い真摯なものと判断しました。
私たちは良く調べもせずに、尖閣竹島北方領土は昔から日本のものと思い込んでいますが、孫崎氏によればそれは違います。
北方領土とされている島々の中には、ロシアと日本が共に固有の領土と主張しているものがあったけれど、1945年のポツダム宣言受諾と1951年のサンフランシスコ平和条約で、四つの大きな島(本州、北海道、九州、四国)と、これに付属する小さな島だけが日本の領土とされ、それ以外の領土(千島列島、歯舞群島色丹島)は放棄したという事です。ですから放棄した島々はロシアが実効支配している事になります。現在条約の解釈で国後島択捉島は日・ロ双方が領土権を主張しており、2010年ロシア大統領が初めて国後島を訪問したのは耳目を集めました。
竹島は実態としては韓国領です。
尖閣諸島は日本領か中国領かという点では、歴史的に見ると「中立」「無主の地」という事になります。
 しかし領土問題は、日本、ロシア、韓国、中国ともその領有権を主張して譲りませんから、国際紛争に発展しかねません。
 その場合日米安保はどうなるのでしょうか。a北方領土は日本の施政下にない為、在日米軍は出動しません。b竹島も米国が韓国領と見做している限り、日韓武力衝突が起きても、米軍が日本側につく事はありません。c尖閣諸島の主権は係争中なので、米軍の介入はと言いますと、「自明ではない」事になります。もし米軍が介入したら、世界一の軍事力で中国軍は苦戦しそうに見えますが、そう簡単ではありません。中国空軍は性能の良いステルス戦闘機を大量に配備する計画で、制空権は中国が握りそうです。中国海軍も対空母ミサイルを開発しています。米空母はうかつに動けません。さらにミサイルは在日米軍基地を破壊出来るので、米軍が制空権を握る事も難しいです。「日中の武力紛争で米国が巻き込まれる可能性が出れば米国は身を引く」のです。もっと言えば、中国は日本を核攻撃し、殲滅する事が出来ます。
 以上の事を考えると、「日本には中国に軍事的に対抗するという選択肢はない」のです。それなら日本がとるべき方法とは何でしょうか?
 それこそ平和的解決の方法を模索する事です。孫崎氏は幾つか挙げていますが、その1として「相手国と直接交渉し、合意点を見いだすこと」です。相当難しいですが、この場合孫崎氏は「国民が事態をいかに冷静に判断できるかがきわめて重要である」と言っています。まず日本は敗戦国となった過程を学び、高い政治的見識のない政府の扇動に惑わされない事が大切なのです。その2として「国連等の政治的取り決めに依存すること」です。国連と言いますと、私たちはあまり期待出来ませんが、「国連憲章の『領土保全に違反する』ことを…国際社会に訴えていくことは、十分抑止力となる」そうです。その3として「国際司法裁判所など国際的な司法に解決を委ねること」です。これは現在問題となっているTPPのISD条項に関連し、全て米国に有利な形の解決になると見られ、ほとんど期待されませんが、こと国際武力紛争となると孫崎氏は真骨頂を見せています。その情報力がモノを言っています。
 孫崎氏は過去の判例を幾つか取り上げ分析していますが、その結果として「客観性に疑問のあるケースはほとんどない。ナショナリズムに大きく左右される当事国の判断より合理性と客観性がある」と言い切っています。私がこの本から学んだ最大の点は、国際司法裁判所に解決を委ねるという事でした。ナショナリズムは、「国の利益や国の伝統を、国際的な観点よりも優先して考えようとすること」とネットにあります。健忘症の国日本の政治屋たちはこれを煽る事を狙っていますが(原発も同様で、福島を捨てた上で国の利益追求から何と輸出の振興まで図っています)、私たちはそれに乗せられないよう、構えておく事が必要だと考えます。
 キリストは「剣をもとに納めなさい。剣を取る者はみな剣で滅びます」(マタイ26:52)と言われました。私はこれは真理だと確信します。