ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

地域雑誌『谷根千=やねせん』(*廃刊)を出した3人の女の人たち

 「わたしはあなたがたを国々の間に散らし、剣を抜いてあなたがたのあとを追おう。あなたがたの地は荒れ果て、あなたがたの町々は廃墟となる」(レビ26:33)。
 最近のブログで、森まゆみさんの書いた『震災記録』(岩波新書)を紹介したところ、多くの方々から☆印を頂きました。この本に興味を持たれた方は多かったと推測します。
 ところで読了後、この森まゆみさんがどんな人なのかもう少し知りたくて、幾つかある著書のうち『谷根千の冒険』という本を選んで読んでみました。
画像はhttp://g.pia.co.jp/bimi/yanesen/から借用させて頂きました。
 この題の谷は台東区谷中の事です。最寄駅はJR日暮里(西日暮里も)です。根は文京区根津の事です。そして千は文京区千駄木の事です。根津と千駄木は地下鉄千代田線の駅となっており、この街で囲まれた地域が「谷根千」となります。この辺りは下町でも昔からの風情が色濃く残っている地域です。
 そこでこの地域に住む森まゆみ山崎範子仰木ひろみ、鶴見よしこの4人が集まり、地域雑誌を作り、これらの街の良さをアピールしようという事になりました。1984年、バブル期における地上げが始まる直前の事でした。
 右図は現在の谷根千工房4人組で、創刊当時の鶴見よしこが抜け、川原理子が入っている時のものです。
 この本を読みますと、決して雑誌刊行までスムーズにいったわけでは無い事がわかりますが、そこは女4人組、森が編集長となり、皆連れだって街を巡り、地域の人々の言われる事を聞いて記事にしてゆく手法は、『女縁が世の中を変える〜脱専業主婦のネットワーク』(1988年)を書いた社会学上野千鶴子が、モデルにしたのではないかと思うほどでした。読んでいると、こういうミニコミ誌の創作は、どうも男が4人集まっても出来そうもないと思いました。
 谷根千地域には多くの古い店や寺、食べ物屋、銭湯などがあり、極めて興味をそそられる、行ってみたい街である事が分かります。過去ログでは根津から降りて、昔iireiさんが通った東大工学部周辺とか、谷中の一部だけ見学した事を書きましたが、もっときめこまかく通ってみたいと思っています。
 1980年代後半バブル経済が始まり、悪名高き「地上げ屋」が横行するようになりました。森がこの本で「地上げとのたたかい」と称して書いているように、昔からの古さが残っている街の由緒ある建物が次から次へと壊され、まさに地域文化の破壊ともいうべき現象になりました。この破壊の光景、今のようにデジカメ写真が盛んだったら、彼女たちは相当な数の写真を残した事でしょう。

 私は80年代後半大阪の茨木市山手台という独立したニュータウンに居て伝道していましたが、連日のように土地や家屋の値段が跳ね上がり、まさに狂乱とも言える異常な状況が出現したのを覚えています。
 翻って現在アベノミクスによるバブル再現かと騒がれていますが、地上げ屋の動きは鈍いようです。あのバブル期崩壊の悪夢がまだ残っているからでしょうか。右図はバブル期の地上げでそのまま残っていた南青山3丁目2,500平方メートルの空き地で、最近旧村上ファンド系不動産が落札したとのMSNのニュースがありました。
 ところでこの好評を博した雑誌ですが、現在工房でその復元作業が続けられているようです。森の東日本大震災への関心と関与も、こうした雑誌制作の経験が生きていると言えるでしょうが、あの途方もない津波は東北の海辺に残る古い文化を壊滅状況にしてしまいました。『震災日録』を書き終えた森は、まだこれで終わったのではないと言っていましたが、彼女ら4人は今後どんな仕事を企画しようとしているのでしょうか?東北の人々を少しでも喜ばせる事が出来るものが作られる事を願います。(文中敬称略)