ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

老化のカギを握っているかもしれない視床下部

 モーセが死んだときは百二十歳であったが、彼の目はかすまず、気力も衰えていなかった」(申命34:7)。
 2013年5月1日のサイエンスデイリサイトでは、上記の題でニューヨークのイェシーバー大学アルベルト・アインシュタイン医学校の科学者たちが研究成果を報告していました。左下はネットから借用。黒で囲った部分が視床下部

 視床下部という言葉は高校生物でも出て来ますが、7年前までは「自律神経の中枢。体温、水分、血糖値、血圧などを調節する中枢』などといった説明がありました。
 「若返りの泉」という言葉がありますが、科学者たちは長らく、「老化」が身体の様々な組織で独立して生じているのか、身体の或る器官による積極的な制御を受けているのか、あれこれ思いを巡らしていました。今回彼らは「老化の泉」を突き止めたのかも知れません。マウスの視床下部は身体全体にわたる老化の制御を行なっているとの報告がされました。彼らが発見した老化関連の特殊なシグナル伝達経路(1個の細胞内で起こる一連の反応で、それにより信号<シグナル>が分子から分子へと次々に伝達されていくもの)は、高齢者の病気の戦いや寿命の延長の為に、新たな戦略を切り開く事になるでしょう。
 大学の分子薬理学のカイ教授は、視床下部が脳の奥の深い所にあり、上記のような大切な役割を担っているなら、きっと老化でも重要な役割を持っているに違いないと、目をつけていたわけですが、今それが解明された事になります。
 老化と共に様々な組織で炎症性の変化が見られます。その炎症がメタボリック症候群(内臓脂肪型肥満<内臓肥満・腹部肥満>に高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態=ネットより)、心臓血管病、神経疾患、多くのタイプの癌といった、老化と繋がりのある病気に関与しています。
 視床下部が老化とどう関与しているのかを見つける為、カイ教授はその炎症を研究し、NF-κB=エヌエフカッパビー(nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells)と呼ばれるタンパク質複合体に焦点を合わせました。
 NF-κBは普通核内因子とか転写因子などと簡単に呼ばれています。細胞質の中では、2つのサブユニットP50,P65から成り、IκBと呼ばれるタンパク質(=抑制因子)と結合していていますが、活性化を受け自由になったNF-κBは核へ移行して、たくさんの遺伝子プロモーター(転写=DNAからRNA を合成する段階=の開始に関与する遺伝子の上流領域)と結合、転写を活性化します。特に炎症反応に関与する遺伝子の転写です。

 カイ教授とそのチームは、マウスの視床下部におけるNF-κB経路の活性化が、かなり老化の進行を加速させ、マウスの筋肉の力や大きさの減少、さらには皮膚の厚さの減少や学習能力の低下をもたらしている事を示しました。それらは全て老化に関わっています。この経路の活性化は組織的老化を促進し、寿命を縮めました。逆にその経路を遮断すれば、対照群と比べると、老化を遅らせ、平均寿命を20パーセントも増加させたそうです。
 さらに研究者たちはこのNF-κB経路の活性化が、視床下部で合成される性腺刺激ホルモン放出ホルモン (GnRH)の減少ももたらし、それが身体全体の老化にも繋がっている事を発見しました。そのホルモンを老化したマウスに注射すると、損なわれたニューロン新生を促し、それによって認知能力の減少をもたらさなくなった事が観察されました。
 視床下部の新たな働きが発見されましたが、老化対策に応用出来れば幸いです。