ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

星亮一著『脱フクシマ論』を読んで

 「彼らは昔の廃墟を建て直し、先の荒れ跡を復興し、廃墟の町々、代々の荒れ跡を一新する」(イザヤ61:4)。
 はじめに。本日は発掘で遅くなり疲労困憊、転倒した足の膝が痛んでいた事もあって、SPYBOYさんの国会周辺デモのピンチヒッターになれませんでした。ごめんなさい。
 しかし福島を絶対忘れないという意味で、電車の行き帰り、休憩時間に読んだのが上記の題の本です。

 星氏は元福島民報社記者、福島原発事故の時、郡山市に住んでいて、NPO法人フクシマ未来戦略研究所理事長の肩書で、警戒区域内全域にて精力的に取材を続けて来ました。2011年4月から各雑誌等にそのルポを書き続け、2013年2月の対談、そして5月のあとがきへと続いています。
 「脱フクシマ論」の意味はあとがきにあります。「フクシマ」から「ふくしま」を取り戻す“脱フクシマ”の復興策、福島の未来像を模索してゆきたいと考えているという事だそうです。肩書からしても、その為にページを多く割いていますが、それ以上にまず2年半以上経過した福島原発事故の現場、特に南相馬市浪江町飯館村川内村富岡町等の地区からの報告が生々しいです。私たちが知らなかった部分に光を当てているので、今更ながら原発の怖さを実感しました。また原発が引き裂いた地区住民、農家、畜産家などの人々の苦悩も詳しく伝えています。また上記市町村の長たちの今後の方針と、住民たちの反発もよく伝えています。
 星氏は帰還可能な地域とそうでない地域を、ルポ体験から峻別しています。例えば川内村は農家自ら農地の除染を徹底して行い、震災以前の水準まで戻そうとしています。しかし原発20キロ圏内の野生化した牛の殺処分で、調べた臓器の内部被爆状況を見て、その多くの部分は「人が住めない」ときっぱり言っています。ですから“除染の幻想に”とらわれている人々が多いのが残念である」と慨嘆します。
 例えば南相馬市桜井市長は、何一つ復興がなされていない中、市職員が大挙辞めて行く現状を見て、「自治体のメルトダウン」と表現しました。
 また放射能プルームの襲った20キロ圏外の飯館村については、酪農家の長谷川健一氏との対談が印象に残っています。長谷川氏は菅野村長の頑なな「除染―帰還」を批判しています。なぜなら農家の背後は山林で、京大の熊取六人衆の1人である今中哲二氏も除染しても住めないと明言しているからです。
 そして星氏は最後に持論である「教育再興」論を展開しています。まず全寮制の中高一貫校の建設、そして福島国際科学技術大学院大学創設です。それを比較的汚染の少ない郡山市、そして他にも会津若松市などが候補としてあります。狙いは世界トップクラスの英知を結集させるという事だそうです。さらに福島大学福島県医大の充実などが続きます。壮大な構想です。しかし私としてはその為にも、被災難民の子どもたち、貧困家庭の子どもたちが機会均等に入学出来る体制を整えなければと思います。奨学金も返還義務無しのものにして、学生が安心して福島、いや全世界の益の為に勉強出来る環境を整えるべきでしょう。
 星氏はこの本が「広く福島県内外で読み継がれ、東北及び福島の真の復興の一助となることを切に願う」と述べて締めくくっています。既に現地の事は良く知っていると言われる方も、再度この本を読み「忘れないで、福島」と拡散させてゆくべきではないでしょうか。