ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

瀧澤美奈子著『日本の深海』を読んで

 「ユダの首長たちは地境を移す者のようになった。わたしは彼らの上に激しい怒りを水のように注ぐ」(ホセア5:10)
 図書館で上記の本を借りて読みました。
 日本は北から千島海溝、日本海溝小笠原海溝南海トラフ南西諸島海溝と五つの海溝が走っていますが、列島を基準に東側に存在します。いずれも深海となっています。そこに四つのプレートの境界がある為です。即ち北米プレート、太平洋プレート、フィリピンプレートと、西側のユーラシアプレートです。
 東日本大震災は太平洋プレートが北米プレートの下に沈み込む、その境界付近(日本海溝が存在)で生じた大地震でした。
 著者はこの仕組みを第一章と第五章で言及しています。その間第三章で深海生物たちに触れ、今話題のダイオウイカという巨大なイカの事も取り上げています。第四章で深海と地球環境を述べています。沖縄がなぜ暑くならないのかといった問題や、深海での深層流の事を論じています。
 そして問題の第二章で深海に眠る資源の最近の知見を述べています。そこに今もめている中国や韓国との間の領土の事柄が入って来ます。特に竹島をめぐる日韓領土問題と尖閣諸島をめぐる中日領土問題では、掲載されている地図には日本の排他的経済水域として、すっぽり入っています。

 「排他的経済水域」(EEZ)という言葉はあまり聞き慣れていません。ネットで調べていますと、ウイキペデイアでは1982年に国連海洋法会議が開かれた際、海洋法に関する国際連合条約締結の事柄が論議されて採択、1994年に発効された条約に含まれている事が記されていました。それは条約第五部にあり、初めて創設された事が分かります。「沿岸国は自国の領海に接続する水域で、領海基線か200カイリまでの水域を排他的経済水域として宣言することができる」(第55条、第57条)とあります。また「海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源の探査、開発、保存及び管理のために主権的権利」と「排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動に関する主権的権利を有する」(第56条第1項)ともあります。図は著書から。
 天然資源の探査、開発、保存、管理などといった経済的目的が主体ですが、まさにその経済的主権をめぐり、日中韓でその水域を巡り火花が散っているわけです。
 瀧澤さんはこの本で深海に眠る資源の事を述べています。それはメタンハイドレート、2熱水鉱床、3コバルトリッチクラスト、4レアアースという、採掘に関心の高まっている対象に絞られています。
 メタンハイドレートは「天然ガスの主成分であるメタンが固体状になっているもの」です。およそ水深千メートルのあたりに存在します。それを回収するわけですから「膨大な費用と高度な技術」が必要で、産業化の為にはまだまだ長い時間がかかりそうです。熱水鉱床は海底火山が活発な周辺で、熱せられた水が噴出する所にあります。そこに金・銀・銅などの非鉄金属成分が濃集しているそうです。しかしそこも下手にいじくるわけにゆきません。周辺の生態系破壊や、相当のヒ素も混じっているからだそうです。バルトリッチクラフトというのは、コバルト、マンガンなどを豊富に含む硬い皮殻状のもので、わりに浅い海山の斜面などに存在します。それも採掘に見合う採算性があるかどうかまだ未知数だそうです。レアアース希土類元素(ランタンからルテチウムまでのあまり私たちに馴染みのない元素)の詰まった泥で、南鳥島沖の公海で見つかっています。水深は約5,600メートルで、泥を吸い上げて回収しますが、またその泥を戻すという事で、海洋生態系に配慮が必要です。今試掘が始まっていますが、どうなる事でしょう。こうした希土類元素は携帯・スマートフォン、LEDなどに欠かせないものと言われ、特に中国が世界生産量のほとんどを占めているそうです。右画像はインド洋で発見されたレアアース泥。裾野市商工会公式ブログより拝借。

 瀧澤さんは事実を語りますが、そうした資源問題を巡り中国・韓国と日本が紛争になる可能性には触れていません。科学の成果が政治に利用される形になりますが、原子力の科学的研究が政治に利用された不幸を考えると、科学者の倫理的責任も問われると思います。海底資源はそのまま眠らせておくというのが一番です