ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

5アンペア生活への挑戦

 「快楽を愛する者は貧しい人となり、ぶどう酒や油を愛する者は富むことがない」(箴言21:17)。
 『5アンペア生活をやってみた』(斉藤健一郎著)を読みました。著者斉藤氏は現在40歳、朝日新聞の記者をやっており、以前そうした題のコラムを新聞に載せた事があります(*私も過去ログで触れました)。今度岩波ジュニア新書で項を新たにして出しました。
 斉藤氏は2011年3月11日東日本大震災の時は郡山支局勤務で、中古の借家に住んでいました。氏にとっては「まさに不意打ちの大災害」でした。家は半壊、それでも飛び出し、まず地震による被災現場を取材し、次に原発災害の場へと移動しました。
 それから半年経て東京勤務となるわけですが、斉藤氏は「人間がつくった原発が、人の命や生まれ育った土地、築き上げて来た財産、信頼を取り上げ、多くの動植物の命を奪い、最悪の環境汚染問題をもたらした」と考えるようになりました。

 しかるに東京は何事もなかったかのように、福島を犠牲にしたまま、電気を放蕩に使っています。その食い違いに鬱々としていた時、2012年6月、野田首相関西電力大飯原発を意識し、「原発を再起動する」、その理由は「国民生活を守る」為だと明言しました。この発言に斉藤氏は激怒し、まず身近で自分に出来る事はないかを模索しました。
 結果は東電の毎月の電気使用量の紙に盛り込まれている契約種別で、従量電灯Bの下にある契約を5アンペアにする事でした(*通常の私たちは30アンペア位でしょう)。徹底した節電です。
 しかし言うは易く、行うは大変です。まず東電としては5アンペア生活は普通の人には無理なので、勧められないとして、最初はこの契約がある事自体を隠していました。そこを粘って質したところ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコン(強)、掃除機(強)、トースター…全て駄目だと、東電社員が来て説明しました。でもそれを覚悟の斉藤氏に対して、説得は効をなさず、新しいブレーカーを取り付けて帰りました。ちなみに5アンペアでは、基本料金ゼロ、電気は使わなければゼロです。
 斉藤氏は新たな生活を始めましたが、最初恐怖だったのは、家電を使いながらいつブレーカーが落ちるかという事でした。

 電気は放射線同様、見る事が出来ず、どれ位流れているのか分かりません。そこで購入したのが「消費電力測定器」という機器です。家電のプラグをこれに差し込み、それを壁のコンセントにつければ、すぐ何アンペアの電流が流れているか分かるだけでなく、積算電力量、電気代まで、液晶画面に表示してくれる優れものです。
 この機器の設置で、どの家電がどれだけ電気を使っているか分かります。
 まず扇風機ですが、強でも0.6アンペアで、夏の暑い時の強力な味方です。洗濯機はどうか。これは脱水に電気を多く使いますが、まずOK。冷蔵庫は開けている時一番電気を消費するので、速やかな開閉に徹すればOK(*しかし年間を通じて最も電気を使うので、夏場を除き使用時だけプラグを挿す事が必要です。でも斉藤氏は最終的に冷蔵庫を放棄、電気代は激減しました)。この他蛍光灯、ノートパソコン、液晶テレビも、だらだら使わない限りOKでした。
 それらを除くと、消費電力の最も大きいのがやはりエアコンです。それに対しては夏場は扇風機で代用、冬場が問題ですが、着る毛布、もこもこスリッパを使い、窓は断熱シート(あまり効かず)を貼ってしのぎました。エアコンは×。次は電子レンジですが、なかなか重宝で手放せません。しか斉藤氏は鍋に入れて使う金属製蒸し器で代用、冷凍食品の大半はフライパンで直接焼けば良いのです。トースターも同様で、レンジと同じ位電気を使いますから、フライパンで代用です。掃除機を強にして使うとやはり電気を食います。これには濡れ新聞をちぎって投げ、ホーキを使えばOKです。炊飯器はどうか。これも鍋で立派に代用出来ます(*私は最近炊飯器でご飯を炊くのに時間がかかり過ぎるのを気にしていた時、年賀状でセブの圧力なべが当たった事を思い出し、それでご飯を炊いています。玄米でも驚くほど早く、且つ美味しく出来ます)。
 最後に節電対策として、「独立型太陽光発電システム」です。送電線を必要としないものです。最初50ワットのキットを3万3千円で購入、後でそれを2つ増加しています。最初のは総工費4万円でした。ちなみにそれをネットで検索してみますと、決して難しいものではないと、自作を勧めるサイトが多くあります。
 斉藤氏は「日々苦しく、忍耐を強いる暮らしを広めたいわけではない」と述べた上で、「できるところから実践し、育て、楽しく爽快な日々を過ごしてほしい」と述べて、この本を閉じています。
 私たちはどこまで出来るでしょうか。東電は毎年と言ってよい程、廃炉費用などを電気代に加え値上げしています。この理不尽さに抵抗する意味でも、斉藤氏は一石を投じたと言えるでしょう。