ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

国が年間被ばく線量設定基準20ミリシーベルト以下にした経緯等

 「しかし、あなたがたは偽りをでっちあげる者、あなたがたはみな、能なしの医者だ」(ヨブ13:4)。
 日野行介著『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』を読みました。福島県「県民健康管理調査」検討委員会が議論を秘密扱いし、事実を隠ぺいした経緯を、毎日新聞社所属の日野氏は徹底的に追及しています。これまで断片的な報道が幾つかありましたが、1冊の本に収まってみると、これまで目に見えなかったものが、よく見えて来ます。
 ここには検討委員会の座長として、第一回〜第十回まで、福島県立医科大学の副学長を務めた山下俊一氏が何度も登場します。山下氏は既に「御用学者」として有名になりました。この人が座長となった為に、チェルノブイリ以来最悪となった原発事故の被害者の、開かれた広範な疫学調査が台無しになってしまいました。国会図書館の標語にもなっている「そして、あなたがたは真理を知り、真理はあなたがたを自由にします」(ヨハネ8:32)は実現せず、チャンスは二度とないと言ってもよいほどの原発被害状況が正しく世界に公開されず、被災者は奴隷状態にも等しい扱いに貶められる事態となってしまいました。

 実はこの検討委員会はいわば「オモテの会議」(*最初は非公開)であり、その「ウラ」に秘密の準備会というのが存在していました。それを執念で追いかけた毎日新聞が、2012年10月3日一面トップで報じました。左画像が毎日のスクープのスクラップ。
 「隠れているもので、あらわにならぬものはなく、秘密にされているもので、知られず、また現れないものはありません」(ルカ8:17)とあるように、この秘密の議論をしていた関係者らの動揺は大きかったです。特に県健康管理調査室の小谷主幹など、日野氏の鋭い質問にしどろもどろとなってしまいました。
 この秘密会では一体何を決めていたのでしょうか。
 それは第一に甲状腺がんが見つかった時の対処の仕方です。甲状腺の異常が見つかっても、福島第一原発事故による被曝の影響ではない」とする事でした。福島県立医科大学の鈴木眞一教授は、甲状腺の病気を専門にしていますが、「チェルノブイリでは事故から4〜5年後に患者の増加がみられた」「一般的に小児甲状腺がんは100万人に1人程度発症する珍しい病気だ」と繰り返し述べ、はじめから甲状腺がん被爆の因果関係を否定し、その旨を検討委員会でも主張するよう、摺り合わせをしたわけです。
 第二に基準被曝線量を、事故後4か月で20ミリシーベルトとする事でした。著者日野氏はこれこそ「秘密会で専門委が示した具体的な数値の案」だと言っています。ご承知のように年回被曝線量は1ミリシーベルト以下というのが、従来定着している数値でした。ですから京大の小出助教は「極端に言えばいくら被曝しても『安全』と伝えるのが彼らの仕事」だと推定しています。これで国は現在除染により20ミリシーベルト以下になれば、避難指示解除準備区域を解除し、住民を帰還させる方針ににしました(田村市都路地区や川内村)。
 第八回秘密会及び検討委員会(2012年9月11日)は、初めて子どもの甲状腺がんが見つかった事を認め発表しました。それから1か月以内に、毎日新聞の上記スクープがあり、もはや秘密会というのは隠し切れず、実施されなくなりました。
 第十回検討委員会(2013年2月13日)は、新たに甲状腺がん患者2名と、7名の疑わしい例が発表されました。鈴木教授の100万人に1人という説は崩れました。しかし会津若松で開かれた甲状腺検査説明会で、鈴木教授は「たった3人」と述べ、会場出席者のごうごうたる避難を浴び、形ばかりの陳謝をしました。
 この本はその後国連人権理事会のアナンド・グローバー氏の勧告、山下県立医大副学長へのインタビューを経て閉じています。
 *1年経過した2014年8月25日の東京新聞には、「震災当時18歳以下の子ども約37万人を対象に実施している甲状腺検査で、甲状腺がんと診断が確定した子どもは5月公表時の50人から7人増え57人に、『がんの疑い』は46人(5月時点で39人)になったと発表した」とあります。今後さらに増えてゆくでしょう。それでも鈴木教授は原発事故とは無関係と言い続けています。果たしてどうなのでしょうか?