ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

東北災害便乗型資本主義ー仙台空港民営化

 「商人は手に欺きのはかりを持ち、しいたげることを好む」(ホセア12:7)。
 2015年3月岩波書店から『東北ショック・ドクトリン』(古川美穂著)という本が出ました。そのうちの1つ、仙台空港民営化を自分なりに考えてみます。
 2005年にハリケーンカトリーナニューオーリンズ市を襲い、壊滅的な状況に陥れた後、それに便乗する形で大資本が公立学校の4分の3を強引に民営化させました。    
 2011年3月11日の東日本大震災後、同じような発想で宮城県仙台空港の民営化(空港としては初)案を、早くもその年の12月に打ち出しました。2014年4月国土交通省は実施方針を正式に公表、2015年8月運営権者(*古川氏によれば、「国や自治体がインフラや施設を所有したまま、運営権だけを民間に売却する方法」による運営権者)が決まり、来年の3月頃完全民営化というスケジュールになっていました。
 ところが古川氏の本が出版された後、国交省や県は事業を確実に成功させる為とか、空港の安全維持策がまだ不十分などの理由をつけて(河北新報などによる)、運営権者(三菱商事楽天三菱地所、ANAホールディングス、東急グループイオングループが候補)の決定を9月に、完全民営化を来年7月に延期する事を決定しました。

 2015年5月24日郡山のアパートに入る3日前、仙台に高校時代の恩師を訪ね、3クラス合同のクラス会を開きました。翌日私たちは3・11で津波被害が大きかった名取市閖上(ゆりあげ)地区、次いでその南の仙台空港を訪れました。

左画像は津波襲来当時の閖上地区の荒涼とした光景で、遠方に嵩上げした護岸の工事が進められていました。次に仙台空港に向かったのですが、空港とその周辺は多少とも整備されてはいました。

しかし地図で分かりますが、この空港自体津波で大きな被害を受け、今もそこから海岸までの様相は閖上と全く変わっていませんでした。空港正面玄関には津波来襲時の写真と、その左側に津波到達の高さ(3.02メートル)を示す柱がありました(右画像左端円柱の青い線がそれ))。
 そして羽田や成田の空港で見られる賑わいは、ここでは全く感じられませんでした。
 というわけで、仙台空港は単なる復旧だけでは東北復興の起爆剤とはなり得ず(*現在古川氏によれば総体的収益は5億円以上の黒字だそうです)、宮城県の村井知事は「『県や国の介入しない純粋な民間企業の活力』によって、三〇年後までに乗客数・貨物量ともピーク時の倍の六〇〇万人・五万トン(年間)に引き上げる、と大きく目標を設定し」ました。
 しかし民営化の延期には、河北新報の片桐記者が「来春の民営化を前に仙台空港の視界が晴れない。発着便の搭乗率低迷や航空業界の事情が絡み、増便取り消しや路線自体の廃止が相次いでいる。空港の潜在的な集客力や利便性が問われており、活性化に向けては東北の官民を挙げた継続的な取り組みが求められる」(http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201506/20150620_13006.html)と言うような、懸念される事態が山積している事が挙げられます。何より地元被災者にはほとんど関係のない事柄だからです。
 しかし私はそれ以上に、この民営化という災害便乗型資本主義に大きな危惧を抱いています。
 私たちが経験し記憶している「民営化」として代表的なのは、国鉄の民営化と郵政民営化でしょう。それについては、メリット、デメリットの評価が半々?で存在します。しかし一般庶民、特に過疎地に住む高齢の方々にしてみれば、まず欠点のほうを挙げるのではないでしょうか。いずれも非正規社員が大幅に増え、競争激化と共に労働者は疲弊し切っています。そこで問題なのが郵政より国鉄民営化です。ネットで調べるとすぐ分かりますが、例えば「JR事故連発は国鉄民営化の失敗なのか 安全コスト削減のツケ」(thutmose.blog.jp/archives/32111394.html)によれば、最近JRでの事故が頻発しています。その原因の一つが「『保守点検、安全管理』の人員も大幅に減らされた事である」であるのは間違いないでしょう。この為に事故が起こるたび、人命が失われ、多くの通勤客が影響を受けています。しかしそれは鉄道という地上を走る列車の問題です。
 そうはゆかないのが、墜落すれば乗客全員が死ぬという航空機事故です。死者520名となった日航機墜落事故から30年になろうとし、今でもその悲劇が語り継がれていますが、初めての空港民営化となる仙台空港で、果たして保守点検・安全管理のプロの人員が十分確保されるのでしょうか。もし民間の経営者でその事に対する意識がなく、利益追求至上主義的な人(おそらく上記した4社のうちの誰かが運営権者になるでしょう)が就任したら、私は第二、第三の日航機事故が必ず生じると確信します。
 その意味で空港は絶対民営化してはならないのです。それを強引に推し進めるところに、まさにナオミ・クラインが名づけた「ショック・ドクトリン」(=ショッキングな政策=東北では災害便乗型資本主義)が存在します。