ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

平和学の父ヨハン・ガルトゥング博士

 「彼らは平和を語らず、地の平穏な人々に、欺きごとをたくらむからです」(詩35:20)

 2015年8月20日の東京新聞に、前日来日した平和学の父ヨハン・ガルトゥング博士の略歴とインタビューが載っていました。私は博士の事は全く知らず、記事を貪りながら、主要な著書を図書館で探してみたのですが、大切なキーワードの一つ「構造的暴力」を含む『構造的暴力と平和』はなく、岩波の『平和を創る発想術』だけ借りて読みました。
http://blog.goo.ne.jp/aikokusyanozyaron/e/b79e283d56b1827f2bccc9c7b08273ebから画像を拝借。
 博士は八四歳、ノルウエーのオスロ生まれで、大学では数学と社会学を学び、博士号を持っています。従って私が借りた本は、冒頭からX軸とY軸を用いて、分かりやすく紛争当事者たちの紛争解決法を説明しています。いかにも数学者らしいなと思いました。博士は1969年の論文の中で「積極的平和」を提唱し、世界各地の紛争の仲介者としても活動しているという事ですから、「主に環境保護、人権問題、持続可能な開発、健康、平和などの分野にて活躍した人物、団体に授与されることが多い」(ウイキより)ライト・ライブリフッド賞を受賞したのも当然の事です(*ちなみに日本では、個人としては故高木仁三郎氏だけです)。
 東京新聞の記事の内容は、他にも朝日新聞からAO153さんが、テレビ朝日報道ステーションからcangaelさんが取り上げています。しかし博士の言う「構造的暴力」については、同じくcangaelさんが紹介したハフポストジャパンの記事にあるだけです。
 この言葉は少し日本語としては難しいですが、博士の言う「積極的平和」「消極的平和」「暴力」と共に、一体のものとして使用される事が多く、いわば「四位一体」のものとして、よく理解しておく必要があると思います。
 博士の発言の中から要約すると、構造的暴力については「社会システムのなかで構造化されている不平等 (資源配分に関する決定権の不平等) を、構造的・間接的な暴力と規定し、その発現である搾取、浸透、分断および辺境化を通して、第三世界における貧困、飢餓、抑圧、疎外などの社会的不正義が繰返し生み出されているとしたもの}(ブリタニカ国際大百科事典)とあり、博士の意図するものに近いでしょうが、まだ少し難しいです。それで「構造的暴力とは、社会構造の中に組み込まれている不平等な力関係、経済的搾取、貧困、格差、政治的抑圧、差別、植民地主義、不十分・不公正な法体系や制度などのこと」(http://www2.aia.pref.aichi.jp/koryu/j/kyouzai/PDF/katsuyo-manyual-2/siryo/G/3/10.pdf)というのが一番簡潔です。博士は私が読んだ上記の書では、「米国の資本主義」を、構造的暴力と呼んでいます。
 それ故この構造的暴力の無い状態こそ積極的平和なのです。
 それに対して「暴力」(又は直接的暴力)は、「実際に目に見える暴力。物理的に暴力を加えたり、言葉によって他者を傷つけたりすること」です。その大規模な形が「戦争」で、必ず行為の主体がいます。同じく上記の書の中では、米国を名指しで挙げています。「これまで米国は幾度も暴力行使を繰り返して来ました。ある調査では、直接的暴力だけでも一九四五年以来五六回の軍事介入をしてきました…なぜ米国はこうも暴力的なのでしょうか。私は、要は米国の経済利益の保全のためだ、と考えます」。
 ですから東京新聞にありましたが、博士は単に戦争のない状況を「消極的平和」と定義し、上記した構造的暴力のない社会状況を「積極的平和」と呼んでいるのです。阿部首相の言う「積極的平和主義」とは似ても似つかぬものです。まやかしの為に官僚が入れ知恵したのかも知れません。
 博士はまた付随的な言葉として「文化的暴力」も挙げています。それは「直接的暴力、構造的暴力の2つに正当性を与え、支えているもののこと。文化的暴力の中には、戦争を容認する意識や、私は関係ないと無関心な姿勢をとることも含まれる。戦争は他人事」(上記PDFファイルより)と定義されています。これまで多数の若者たちが、この文化的暴力をふるっていたと言えるでしょうが、ここに来てシールズなどの「戦争は自分事」と考える人々が増えて来ました。
 博士は私が借りた小冊子の中で、様々な「平和を創る発想術」を述べています。一例として沖縄問題について(絵が下手ですみません)、図の右に様々な考え方が示されています。博士はそのうちから1か1.5を推奨しています。1.5は前沖縄県知事大田昌秀氏の構想でした。博士は2と3はほとんど正当性がなく、ゆえに4の共同管理も駄目で、「沖縄がより高い自治権をもって独立するべきです」とずばり指摘していました。他にもパレスチナ紛争の解決、9・11についても、示唆に富む提言をしていました。短いながら一読に値します。