ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

ノーベル賞の大隅氏の科学論は、成果主義一辺倒の福島とは合わない

 「…あなたがたも、賞を受けられるように走りなさい』(コリント第一9:24)。
 2016年度ノーベル医学生理学賞は、東工大名誉教授の大隅良典氏に決まりました。
画像はネットから借用。
 大隅氏の研究内容は非常に面白そうでしたが、今回はその紹介ではありません。
 2016年10月4日の福島民報によれば、大隅氏は東大教養学部で基礎科学科を専攻、大学院の頃から本格的に生物学、特に分子生物学の研究に邁進し、顕微鏡で酵母菌を使っての真理の探求を、「約四十年…問い続けた」結果として、ノーベル賞という「栄光をつかんだ」事になります。*時事通信の記事では、直接の成果は20年前だそうですが、それでも長い年月をかけての成果です。
 ですから大隅氏の研究は、まさに基礎科学の最たるものと言えるでしょう。40年にわたる様々な試行錯誤を重ねての研究続行は、並みの人ではなかなか難しいと思います。成果が出るかどうか、当初は全く分からないからです。そこでモノをいうのは、「ひらめきの才能型というより、努力家」と同僚たちから評価されたように、こつこつと諦めずに続けることです。これなら生まれた時、1つは必ず賜物を与えられている私たち凡人でも、各自の分野で続ける事により思わぬ成果を得ることが出来るのではないでしょうか。
 私は信仰を持ってからおよそ37年間聖書の学びをしてきました。しかし古希に至っても、全く序の口といった感じで、ますますその真理は奥深くて分からなくなり、大隅氏が「偉くなろうとしたら駄目。自由に研究できる時間を大事にしてほしい」と言ったように、偉くなれない仕組みになっています。救い主イエス・キリストだけが偉いからですΣ(ಠิωಠิ|||) 。
 福島民報では会見の最後の発言を伝えています。安易に成果を求める社会に警鐘を鳴らしたのですが、氏は次のように断言しています。「科学が『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている。本当に役立つのは百年後かもしれない。将来を見据え、科学を一つの文化として認めてくれる社会を願っている」。
 これは現在福島で「イノベーション・コースト」(=福島・国際研究産業都市)と称して、2020年の東京オリンピック開幕に照準を合わせ、福島復興の短期成果を図る安倍政権への強烈なカウンターパンチです。
 安倍首相はその事が全く分かっていない、だから電話での祝福は的外れなのです。そのやりとりがネットの産経ニュースにありました(http://www.sankei.com/politics/news/161003/plt1610030042-n1.html)。繰り返し読むと、「おめでとう」「ありがとう」は双方全く儀礼的なものである事が分かります。電話が繋がりにくかったのは、大隅氏がもういい加減にしてくれという皮相な見方も出来ます。首相「この研究は、先生は、1980年代に既に発見されたという風に伺っておりますが、あの、ノーベル賞を受賞されるという風に自信をお持ちだったですか」大隅氏「すみません、ちょっと電話の調子が悪いみたいです」首相「あ、そうですか。すみません。先生はこの発見を随分前にされているわけですが」大隅氏「はい、はい」首相「この間、先生はいつか、ノーベル賞を、生理学・医学賞を受賞されるという風に自信を持っておられました?」大隅氏「・・・」首相「もしもし?」首相「ちょっとつながりが悪いようですが、先生の受賞によってですね、日本人研究者、3年連続で受賞することになりましたが、日本がですね、生物学や医療をはじめ、イノベーションで世界を牽引(けんいん)して、世界に貢献できることを大変うれしく思います…」。時事通信サイトでは、大隅氏は「ノーベル賞学者が日本で毎年出ているなんて浮かれている場合ではない」と一喝しています。
 福島県のサイトを見ると(http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list275-1006.html)、「震災、原発事故によって失われた浜通りの産業・雇用を回復するため、廃炉やロボット技術に関連する研究 開発、エネルギー関連産業の集積、先端技術を活用した農林水産業の再生、未来を担う人材の育成強化などを通じて新たな産業・雇用を創出し、住民が安心して帰還し、働けるよう、浜通りの再生に取り組んでいきます」と、構想の主旨が記されていますが、これらは4年後のオリンピックの時までに、出来る限りの成果をあげなければなりません。以前池内了氏の本を取り上げた時、氏はこれでは研究者は萎縮・疲弊してしまうと憂いていましたが、短期の成果競争では必ずそうなると思います。良い発想なんて生まれるはずがありません。『イノベーション・コースト』と関係ある『革新的研究開発推進プログラム』でSPYBOYさんがコメントし、無理だと断言しておられました( http://d.hatena.ne.jp/hatehei666/20160804/1470316600)( ՞ٹ՞)。10月12日、福島民報のあぶくま抄でも「直ぐに役立つ成果を求める公募型の競争的研究資金を拡大しているが、長い目が求められる基礎科学には冬の時代のようだ」と、慨嘆していました。
 ノーベル賞では、歴代の経済・平和賞など見ても、何だか胡散臭いものを感じさせますが、今度の医学生理学部門での大隅氏の受賞は、そうした懸念を払拭させるに十分でした。若い研究者たちよ、大隅氏に見習え、短期で成果をあげるなどと野心を抱くな、公募の誘いに乗るなと言いたいです。