ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

加藤寛・最相葉月共著『心のケア』を読み得た新知見

 上記の本を図書館で借りて読みました。新書にしては活字のポイントが比較的小さく、それだけ重量感のある本でした。ですから滑り出しの部分を読みながら、到底2週間では読み切れないと思ったものです。ところが途中から加速力がついて、一気に読み進める事が出来ました。これはルポライターとして定評のある最相さんが、うまく加藤さん(兵庫県心のケアセンター副センタイー長兼診療所長)に質問して、的確な答えを引き出しているからです。
 加藤さんは阪神・淡路大震災で被災者の心のケアに従事し、失敗を含めた実に多様で豊かな経験を持っています。それを生かして今度の東日本大震災でも大いに活躍しました。ですからこうしたケアの問題には深い関心を抱いている私も、いろいろ新知見を得る事が出来ました。各章毎に付箋がありますが、ここでは一般的な紹介記事はネットでの読後感想に任せておいて、私が得たものを記します。
 まず人々が災害に襲われた時示す当たり前の反応です。

加藤教授は恐怖体験直後には全ての感覚が麻痺した状態になり、次いで脳が過剰に興奮して気持ちが高ぶり、避難所全体が「妙に昂揚するした気分に支配されるようになる」と言っています。つまり人々はかえって活気に溢れ、一致団結してこの困難を乗り越えようといった雰囲気になるそうです。それを「震災ハネムーン」と呼ぶそうです。初めて聞いた言葉ですが、確かにあの頃の状況に合っています。そしてさらにその後は個人としても共同体としても再建の困難さに直面し、失望・幻滅の状態になります。この東日本大震災では、あまりに被害がひどく、再建の目途も立たない為、幻滅状態が長引き、回復が遅れそうです。
 次に加藤教授による左図ですが、個人の示す心理的反応が2行目の3つに大きく分けられるそうです。いずれも正常な反応です。
 1は生命の危険に直面するといった悲惨な恐怖体験です。激しい恐怖・戦慄を生じさせるものです。これはいつまでも生々しく、繰り返しよみがえって来ます。だいたい時間と共に収まるのですが、そうでないといわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥ります。その典型的症状はa意図していないのに体験を思い出す(悪夢としても現れる)、b思い出したくないので、何とかして回避しようとする、c不眠やイライラがいつまでも収まらないといったものになります。専業主婦ですと、家事が出来ず、家族から離れて引きこもるといった症状が出ますが、それらは自己申告してもらわないと、えてして見逃されがちになります。神奈川でもそうした人がいましたが、言っても信じてもらえないとますます症状は悪化しそうです。7割は時間の経過と共に回復するそうですが、3割の方に残り、その治療法は相当難しいようです。心のケアの一端を担う私も銘記しておきたい事柄です。
 2は誰もが愛する人を失った時体験する悲しみの感情ですが、きちんと悲しんでおかないとうつ病になったりして、後々まで回復が遅れます。ボランティア活動では、ひたすら傾聴する事が大切でしょう。しかし自衛隊、消防士、医師を始め、そうした事に携わる人自身も、凄い自責の念にかられてしまいます。外部及び内部の支援者の心の傷の癒しの為には、まず自分が自責の念を持つのは当然、いかに冷たいと言われようと、そこの割り切りが大切だと加藤教授は言います。この点私も大いに学びました。母の死でPTSDに近い経験を持ったものですから。外部の人の傾聴と適切な助言で救われました。
 3は最相さんもどういう事か質問しています。二次的生活生活の変化とは、生活環境が全く変わり(仮設住宅住まいを余儀なくされる事等々)、経済的な影響、対人関係の変化が大きくなる事です。やはり鬱的気分になりアルコールに走ったり、自殺したりという深刻な事態にも繋がります。
 この中身の厚い本を詳しく紹介する余白はありませんが、数十年単位と長く続く今度の大災害、多くの被災者にとってはまさにこれからが勝負です。
 聖書ではやはり物質的にも精神的にも悩める人々を、五千人(マタイ16:9)、四千人(マタイ16:10)といった単位で、一気に癒された方、即ち救い主イエス・キリストにより頼む事が大切でした。イエスは個人的にも相手の訴えに傾聴し、何を望むか尋ねた後その人を救われました。
 「そこでイエスは、さらにこう言われた。『わたしに何をしてほしいのか。』すると、盲人は言った。『先生。目が見えるようになることです』」(マルコ10:51)。