ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

東電を未必の故意、業務上過失で告発している槌田敦氏

 図書館で『福島原発多重人災 東電の責任を問う』という題の本を借りて読みました。著者は物理学専攻でこの原発事故原因究明でめっぽう強い槌田敦氏と、タンポポ舎という所で働いていて、これまた原発原因に詳しい山崎久隆、原田裕史氏の3名です。特に本の最後でこの3氏が討論を行っていますが、山崎・原田両氏が槌田氏に突っ込んだ質問を浴びせており、極めて白熱した議論となっています。「これは事故を超えて犯罪だ」という項を書いた槌田氏の推理と共に、特に化学が好きだという人にはお勧めの一冊です。
 ここでは原発1〜4号機の事故原因を詳しく述べている槌田氏の論理に注目したいと思います。東電が全ての情報を公開せず、隠してばかりいるという大きな制約の中、小出裕章氏や国会事故調査委員会などとはまた別の形で推論を重ねており推理小説を読むような面白さでした(私だけかな、それに不謹慎かも)。
 まず原発第一号機ですが、私たちが映像で知っているのは、12日午後3時過ぎの大きな水素爆発です。

 槌田氏はそれに至るまで何が生じたのかを詳述しています。1地震直後配管破損、停電で非常用ディーゼル発電機が起動したが、東電は緊急炉心冷却系<ECCS>を使用せず、原子炉冷却の措置をとらなかったので、炉心空炊き状態となる 2津波到来で緊急炉心冷却系機能不全 3炉心空炊きで炉の底が抜け、炉内の水蒸気が格納容器に流れ込み、限界を超え破裂寸前になる 4格納容器をベントする(=水蒸気逃し弁を開放)。放射能の大量放出 5これにより被覆管ジルコニウム(中にウランを焼き固めたペレットあり)と水蒸気の反応で発生した水素ガスが建屋天井に溜まり空気と反応して、12日に水素爆発を起こす。 
 次に原発二号機です。建物は比較的健全でした。隔離時冷却系というのを作動させ、冷却は保たれていました。水素爆発も格納容器の破損もなかったのです。ところが不運な事に3月14日の第三号原発の爆発で、原子炉の配管が破損した為に、冷却水が急速に失われてしまいました。

 そこで1緊急炉心冷却系の出番だったが、動かす為の電源が失われていた。その復旧努力を怠り、原子炉のベントと共に海水を注入した為、原子炉を破局的破壊に導いた 2格納容器に流れ込んだ放射能は、15日にそこのベントを行なった為、大量に大気中に放出、同じ15日の第四号原発の爆発による放射能放出と相俟って、折からの南東の風で、双葉町浪江町飯館村郡山市などを広範囲に汚染した。
 原発三号機では14日に建屋内で爆発し、黒煙が垂直に300メートルも上昇しました。勿論第一号機と同じく緊急炉心冷却系を用いず、炉心空炊き、炉心崩壊、原子炉の底抜け、燃料ペレットの一部格納容器落下、海水注入の為のベントで放射能大量放出が生じました。しかし槌田氏によれば、格納容器で爆発は生じていません。

 ところで水素爆発は黒煙にならないので、何が原因かを槌田氏は詳しく想定しています。1爆発は使用済み核燃料一時貯蔵プールで生じた。そこは地震で亀裂が入り、水が徐々に失われ核燃料上部が空焚き状態になる。2燃料ペレットが、プールのコンクリート破片と共にプールに落下 3燃料は水の供給で核分裂反応を起こし臨界となる 3水蒸気爆発と核爆発が起こり、ペレット、コンクリ片と共に、300メートルも吹き上げる 3燃料プールでヨウ素131検出、核爆発を裏付ける。
 最後に原発四号機です。上記の如く3月15日に生じました。当時ここの原子炉は蓋が外されていました。定期点検の為です。というよりシュラウドといって、原子炉圧力容器内部にあるステンレス製内釜の交換工事の為です。ですから燃料が無い筈の原子炉で爆発が起こりました使用済み核燃料プールで生じたのではありません。

 ずっと後の写真でも、プールは破壊されずちゃんと残っています。ならば蓋の開いた5階床面原子炉で爆発が起こり、水蒸気が激しく噴き上げたのは一体何故か?東電はその工程表提出を拒んでいますから、何か重大な隠匿すべき事柄があったのでしょう(槌田氏は新燃料の装荷を行ったと見ています)。槌田氏の推測では、水蒸気爆発後の白煙を分析すると、東海村JCO臨界事故でのチェレンコフ光が見えるとの事で、4号機に関しては「核暴走」と言っています。原子炉内部はプールの水が供給されていますから、今日に至るまでその水の温度が相当高目になっています。故に持続的臨界の状態になっているとの事です。そしてこの四号機と二号機から放出された放射能は3月20,21日の北風で、茨城、埼玉、千葉の流山、柏、松戸など、そして東京から神奈川まで広範囲に汚染しました。
 目下の最大の問題は三号機の「核爆発」、四号機の「核暴走」ですが、それが究明されようがされまいが、四つの原子炉、四つの使用済み燃料プールで今後も再臨界が起こる危険性がずっと続く事です。全く収束していない事を肝に銘じておく必要があります。
 以上から槌田氏は、過去の欠陥是正措置をとらなかった勝俣会長よりも、現場の吉田所長に対する業務上過失致死傷罪という刑法適用を重視しています。なぜか?1高圧注水系の使用を躊躇 2非常時電源の回復を後回しにした 3海水を注入した 4原子炉圧力容器の逃し弁を開いた 5格納容器をベントした 6中性子計測結果を改ざんした? 7四号機原子炉に燃料を搬入していた?という事が挙げられるからです。
 緊急炉心冷却系<ECCS>における流れは、http://tokyo80.com/energy/P4.html で見られます。
 聖書で言うなら東電による平然とした嘘、業務の怠慢への罪意識のなさが原子力村の「文化」であり、日本国民に計り知れない悪しき模範を示した事が言えます。
 「あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない」(出エジプト20:16)。
 「こういうわけで、なすべき正しいことを知っていながら行なわないなら、それはその人の罪です」(ヤコブ4:17)。
 *これはあくまで槌田氏による推測ですから、他にも原因は考えられます。議論のたたき台となればと願っています。真相はいずれに?