ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

行動派の学者小熊英二氏

 小熊英二氏は1962年生まれの50歳、東大農学部を出て現在慶応大学で歴史社会学を教えています。その執筆活動は精力的で、『1968年』などは大著の為、私はまだ手を付けていません。私も関与した時代の事ですが。
 そしてそれ以来としては珍しく行動派の学者となり、毎週金曜日に行なわれている反原発デモにも積極的に参加しています。

 その小熊氏ですが、大きな著作を書いた後倒れ、しばらく療養していたそうで、全快は東日本大震災が起きた直後でした。それから反原発デモなど、数々のデモに参加しつつ、その経験を反映させた書物を著しています。新聞書評で取り上げられた『社会を変えるには』も好評で、今回私も図書館から借りて読みました。新書としては異例なほど分厚く、500ページにも及び、その該博な知識で縦横に語るので、読む側としては大変骨が折れます。最初から読み出したのですが、途中で主題は何だったのか忘れてしまう程でした。全て紹介するのは不可能で、私が付箋を置いた箇所を中心に若干述べてみます。
 7月19日の朝日新聞にも登場していますが、この本とほぼ同じ事が書かれていました。
 毎週金曜日の夜行われている反原発デモですが、国会や首相官邸周辺で参加して来る人々の数は、今でこそ少し減っているかもしれませんが、ピーク時に20万人ほどと推定され、それは安保闘争以来実に50年ぶりと小熊氏は言っています。
 そしてその参加者の構成も変化しています。60年安保では組織労働者と学生、68年闘争は実質学生だけでした。しかしこの2012年のデモは、ほとんど全部が組織と関わりを持たない自由参加形式なので、老若男女、親子連れ、若いカップル、官庁からの帰りと思われる自転車に乗った背広姿のサラリーマン、外国人、車椅子に乗った障害者など全く様変わりし、これは小熊氏によると「前例のない事態」になりました。
 それまでは高度成長期に築かれた日本型工業化社会が、ほぼ安定して機能していましたが、ここに来て日本社会が変動期に入った為です。そこでは政財界やマスコミの中枢にいる人々など「守旧派」は、せいぜい数十万人に過ぎないそうです。一方脱原発を支持する人々は実に1億人に相当すると、小熊氏は分析しています。もはや不合理な日本社会の仕組みを、そうした古い仕組みを維持している政治家たちに任せておけば大丈夫だと思っている人々の割合は、わずか3パーセント位にしかならないそうです。
 それなら自分で考え、反対の声をあげる運動が持続的になれば、社会を変える力になると、小熊氏は言っています。そのアピールはこの本の随所に出ており、私たちは大いに励まされます。
 ですから法や国家を尊重せよ、治安を強化せよ、自助努力で競争を勝ち抜け、だけど社会保障費などは削って小さな政府にせよ、という「古い皮袋」の人々は、反原発に象徴される新しい皮袋の人々を取り込もうとしても、対立と暴力が生まれるだけです。この古い皮袋の人々は、相手に「伝統的な」行動を要求し、自分は自由に振る舞おうとするからです。
 聖書ではイエス・キリストがその事を述べておられます。旧約と伝統を守ろうとする学者・パリサイ人といった古い皮袋の人々に対して、キリストは民衆に新しい教えをもたらしました。そして両者が相容れない事も伝えられました。
 「また、人は新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことをすれば、皮袋は裂けて、ぶどう酒が流れ出てしまい、皮袋もだめになってしまいます。新しいぶどう酒を新しい皮袋に入れれば、両方とも保ちます」(マタイ9:17)。