チョコの誘惑とエンケファリンの働き
9月20日のサイエンスデイリサイトでは、「脳の研究によりチョコレートへの誘惑の根源が示されている」といった題で論文が紹介されていました(http://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120920135605.htm)。ミシガン大学のアレクサンドラ・ディフェリスアントニオ教授ら研究チームによる成果です。
私たちは基本的にチョコレートが大好きで、食べ始めたら抑制するのはかなり難しいでしょう。
こうした働きは脳の予測されなかった領域で生じるアヘンのような化学物質による事が、ネズミを用いての実験で判明しました。
左図でネズミが近づいているのは、M&M’S(エムアンドエムズ)という会社が販売しているミルクチョコレートのブランド名です。
その脳の特定の領域は「新線条体」と呼ばれています。
右下図の黒い部分がそうです。
研究チームはこの新線条体を直接刺激する化学物質を作り、ネズミに投与しました。するとネズミは通常の2倍以上のチョコレートを貪り食いました。そしてネズミがそのミルクチョコレートを食べ始めると、アヘンに似た化学物質が新線条体で作られ、しかも急増しました。その化学物質がエンケファリンと呼ばれるものです。神経伝達物質です。
このエンケファリンの増加で、ネズミは早く沢山食べたいという衝動に駆られるようになりました。
新線条体は既に肥満体で過食気味の人がご馳走を前にすると、活動が高まる事が知られています。
従ってそこでご馳走を食べ始める時産生されるエンケファリンの働きが人間でも詳しく解明され、薬などで制御できれば、過食症の治療に役立つと、研究者たちは期待しています。私たちもこの事を覚え、特にチョコレーートを食べ過ぎないよう気をつけましょう。カロリーも高いですから。
聖書のはじめに登場するアダムの妻エバは、エデンの園の善悪の知識の木の実を食べてしまい、取り返しのつかない罪を犯しました。
「そこで女が見ると、その木は、まことに食べるのに良く、目に慕わしく、賢くするというその木はいかにも好ましかった。それで女はその実を取って食べ、いっしょにいた夫にも与えたので、夫も食べた」(創世3:6)。
もしかすると目に慕わしいその木の実を見ただけでエバの脳の新線条体は働き、エンケファリンを沢山産生したかも知れません。
おいしくて夢中になって食べ、夫にも勧めたからです。こうした想像は楽しいですね。