ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

英国の経済学者ウィリアム・ヘンリー・ベヴァリッジ

 「自分を富まそうと寄るべのない者をしいたげる人、富む人に与える者は、必ず乏しくなる」(箴言22:16)。
 かつて朝日新聞をずっと購読していましたが、その社説で気に入るような記事はまず一つもなかったと言えます。しかし東京新聞の社説は面白いです。何かしら考えさせられる事があります。
 9月24日の社説では、「社会保障費のあり方 繁栄阻む『五つの巨人』」という題で、英国の経済学者ウィリアム・ヘンリー・ベヴァリッジの事が紹介されていました。私はうかつにもこの学者の名前を知りませんでした。

しかし「揺りかごから墓場まで」という言葉を生み出した人と言えば、なるほどと思うでしょう。
 彼は1942年に「チャーチル首相の命により、社会保障制度の新しいあり方を示す『ベヴァリッジ報告』をまとめた」とあります。
 そして社説の「5つの巨人」が記されています。それは「窮乏」「疾病」「無知」「不潔」「怠惰」です。
 それらが英国社会の繁栄を阻んでいるというのです。それで「窮乏の根絶のためには、社会保険制度が有効であると考えた。他の巨人に対しては、総合的な社会保障制度が必要である」と、ベヴァリッジは主張しました。
 このヘヴァリッジ報告は、第二次世界大戦で疲弊していた世界の多くの資本主義諸国に、福祉国家の基本モデルとして大きな影響を与えたのです。
 英国ではチャーチルが1945年の選挙で敗れた後、労働党のクレメント・アトレーが首相となり、この報告に基づいた福祉国家の建設を目指しました。
 勿論日本もそうで、「憲法生存権や勤労権が規定され、生活保護法や労働基準法などが施行され…国民皆保険・皆年金が実現し」たのです。
 新自由主義を標榜する小泉・竹中路線が明らかになる2001年位までは、国民はそうした制度を曲がりなりにも享受していたと考えます。昭和32年、父親が連帯保証をしていた会社が潰れ、その借金返済で疲弊した母親が狭心症で倒れ、団塊の世代の皆さんが懸命に働いていた頃、私も大病して経済的に苦しんでいた40年間、守られて来たのはそうした制度による恩恵と、病気の後得た信仰によるところが大きかったです。故にベヴァリッジの5つの巨人のうち、無知と怠惰だけは努力して克服する事が出来たと思っています。
 小泉内閣退陣後、現安倍首相はこうした流れにはなはだ逆行しています。ヘヴァリッジではなく、政府の社会保障制度改革国民会議は、自分のことは自分や家族で面倒をみる「自助」重視を基本とする報告書を出し、給付減・負担増を基調に、介護・医療負担増を決め、公的年金の減額、消費税の増額など次々と実施に移して来ました。
 それによりヘヴァリッジの路線の一つである窮乏が、ますます格差社会の中でひどくなり、社説の最後では「窮乏は社会の繁栄を阻むのだ。国は約束を守り、充実した社会保障制度を築いていくべきだ」と、強く主張していました。
 日本にはヘヴァリッジの如く、政策に影響を与えるような経済学者はいないのでしょうか。いやむしろ充実した社会保障制度の提案をしても、政府は聞く耳を持っていないというべきでしょうか?