特定技能外国人受け入れで廃炉作業は進むのか
「 今、私は才知に恵まれた熟練工、職人の長フラムを遣わします」(Ⅱ歴代2:13)
19年4月19日の東京新聞は、東電が廃炉作業で「特定技能外国人」を採用する方針を明らかにした事を報じていた。
はてなと思ったのは「特定技能外国人」という言葉である。
調べてみると、昨年10月12日に法務省入国管理局が創設する旨を公表していた(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/siryou2.pdf)。
「真に受入れが必要と認められる人手不足の分野に着目し、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れるための新たな在留資格を創設する」とあった。
どの業界でも人手不足は深刻である。そこで就労意欲の高い外国人に在留資格をとってもらい、日本で働かせる制度が入国管理局で整えられ、これまで何回も法の改正が実施されて来た。
その流れのうち一番最近の法改正が上記サイトに載ったわけである。しかしこの内容を一瞥しても、極めて分かりにくいものだ。新設されたのは「相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格『特定技能1号』と,同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格『特定技能2号』」だそうだ。しかしその目的を理解するためには、以前から行われていた技能実習1号、2号制度というものを頭に入れておかなければならない。
その違いがややっこしいので、比較してみたサイトがあった(https://visa.yokozeki.net/tokutei-ginou/)。それを見ると、「技能実習」の目的とは、「国際協力の推進」、「特定技能」とは、「外国人労働者としての在留資格」だという。そして両者の活動は、全く異なると言ってよいとある。しかしこの記事を書いた人は全く日本語が下手だし、何を言っているのかよく分からない。法務省の記事を分かりやすく解説する趣旨だろうが、事実はさらに難解なものとしている。「わけのわからない理屈を使って相手をケムに巻き、自分の主張を正当化する」する東大話法を思い出した。両者の関連性は無いに等しいというが、このサイトのリンクを辿ると、技能実習2号を終了した外国人は、特定技能外国人1号の試験を免除するとあり、大いに関連している。
全てそんな調子なので、もう追うのは止めた。時間の浪費である。押さえておく事は、東電が「特定技能外国人」を採用するという点で、それも廃炉作業での事である。
すると廃炉作業とはどの分野になるのか、これらのサイトから探してみると、建設業と推定する。なぜなら廃炉という分野は遂に見つからなかったが、築炉なら建設業の一職種となっているからだ。こんな大事な事が載っていない。
しかしこの法務省の方針(*建設業なら国土交通省も関与する)にぴったり合わせる形で、東電が特定技能外国人を採用すると発表した。だから両者はあ・うんの関係だろう。東電としては極めてリスクの高い廃炉作業で、外国人労働者を喉から手が出るほど欲しいに決まっている。ところがこの特定技能外国人1号は、在留期間が通算5年、家族の帯同不可という条件がある。しかし今後試験などを経て、特定技能外国人2号となれば、在留期間の更新制限無しで、帯同可となる。その2号がそう遠くない未来に誕生する。
東京新聞の記事では、対象が特定技能外国人1号なのか2号なのか明らかにしていない。でも東電は最終的にこの2号誕生を待つ事になるだろう。5年の制限が付いては、東京新聞も懸念するように、被ばくした人の累積放射線量追跡が、そのあと難しくなるからだ。
深刻なのは、廃炉作業がスムーズに進むかどうかである。東京新聞でも触れていたが、幾ら日本語に熟達したとしても、急を要する突発的な出来事で、意思伝達が円滑に行かず、大事故に繋がってしまう懸念があるからだ。私自身も日頃感じているが、ネットで「日本語は難しい」を検索してみて欲しい。世界でも最難関の言語の一つである。廃炉作業は何十年にもわたる危険な作業だから、「特定技能外国人」を安易に採用するのは止めて欲しい。
この下書きからだいぶ経つが、東電決定に対して早くも1か月後、厚生労働省が「極めて慎重な検討」を要すると判断し、通達を出していた。それを受けて東電は、当面就労させない方針に切り替えた。私は「当面」ではなく「永久に」就労させてはいけないと考えている。4か月以上経て法務省はどう思っているのか。