ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

冬眠の謎と雪山事故と聖書の教え

 最近出た岩波新書の『冬眠の謎を解く』(近藤宣昭著)は、なかなか面白かったです。
 特に実験動物としてシマリスを使いながら、冬眠の謎を解いてゆく作業は、わくわくしながら読み進める事が出来ました。最後まで面白かったですが、やはり最初の方の冬眠と心臓の働きに関わる箇所が興味深かったです。
 冬眠動物の場合、低体温でどうして心臓が停止せず、異常を起こさないのか、というのは本当に不思議な事です。
 それを近藤氏は丹念に追っているわけですが、細胞膜にあって調節をしているカルシウムイオンチャネル(難しい用語ですが、高校の生物学では出て来ます)に注目して、カルシウムイオンの増減を調べています。そこではサイクリックAMPという信号伝達物質が働いて、チャネルが開くのを促進しています。それで心筋の収縮を起こすカルシウムイオンが細胞内に大量に流入するわけですが、それだけでは深刻な問題が生じます。つまりカルシウムイオンが多すぎると、心筋細胞が勝手な収縮を続け、低温状態では最終的に細胞の破壊=死をもたらしてしまします。カルシウムイオンは生命維持に不可欠でありながら、働き方次第で細胞破壊を起こす「強力な凶器」にもなり得るという二面性を持っている事になります。
 そこでそのイオン濃度を適切に調節する仕組みが必要になるわけですが、近藤氏は心筋細胞にある筋小胞体(=サクロプラズミック・レティキュラム)に注目しました。冬眠中の低体温状態でこの筋小胞体の機能が、普通の状態より驚異的に増強されているという事が分かりました。それにより低体温での心臓死が防止されているのです。
 私たち人間のからだは体温低下で短時間のうちにあらゆる細胞や組織が破壊されてしまい、死を招きます。6月1日の新聞では、エベレスト登頂に挑み、成功した後下山途中で突然死した神戸市の62歳の男性の事を伝えていました。その原因は勿論酸素の問題もあるでしょうが、やはり低体温による細胞内のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンの制御機能が低下して、急激な心臓の弱体化と死をもたらしたとも考えられるでしょう。その最たるものがカルシウムイオンチャネルの機能不全でしょう。
 普通の生活でも体温低下は様々な健康障害を起こし、有名なお医者さんが「体温を上げる工夫をしましょう」と熱心に啓蒙しています。
 以上から私はまず人間が低体温に対して極度に弱い事、従って冬山登山は人間の能力の限界を試したいという野心も働いていると思いますが、そうした危険にあえて臨む事は、神のみこころに反していると主張します。
 救い主イエス・キリストが言われた「あなたがたの神である主を試みてはならない」(申命6:16、マタイ4:7)という事を銘記するべきです。人間は常に傲慢となり、神に挑むような無謀な事を行い、自ら死を招いているのです。
 それと共に冬眠の低体温下で生きる冬眠動物の不思議さから、神の知恵による精巧で緻密な身体の仕組みの創造を強く感じました。
 「ああ、神の知恵と知識との富は、何と底知れず深いことでしょう。そのさばきは、何と知り尽くしがたく、その道は、何と測り知りがたいことでしょう」(ローマ11:33)。