ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

スティーブン・グリーンハウス著『大搾取!』を読む

 この本はニューヨークタイムズの記者グリーンハウスが米国のおよそ2年前の労働実態を描写した恐ろしい本です。
 日本で実際貧困者の為に活動を重ねている湯浅誠氏の本からのリンクを辿らないと見つからない本です。大抵の新刊書でこうした類のものはスクラップしてあるのに見つからなかったのは、文芸春秋社の宣伝不足です。
 前置きはとにかく、この本の目次を書き連ねて見ると、第一章「酷使の現実」、第二章「不満には恐怖で」、第三章「働く意欲が失せていく」、第四章「戻ってきた十九世紀、第五章「消えた会社との約束」、第六章「弱者がさらに弱者を絞る」、第七章「派遣、終わりなき踏み車」、第八章「低賃金の殿堂ウオルマート」、第九章「王道はある」、第十章「瀕死の労働組合」、第十一章「はいあがれない」、第十二章「夢のない老後」、第十三章「すべての船を押し上げる」となっています。
 かつて二度ほど米国のテキサス他を訪れた事があります。1980年の米国には活気がありましたが、2001年訪問した時もまだひどい実態を感じる事がありませんでした。しかしその後の米国は急激に悪化しています。そしてこの本の最近年度、つまり2008年には全くひどい状況で恐ろしくなります。それが日本の現在とそっくりだからです。後ろの解説で湯浅誠氏が指摘している通りです。私はもはや幾らお金をもらったとしても、米国に行く気は毛頭ありません。
 かつてケネディ大統領が言った「上げ潮はすべての船を押し上げる」という事は、今の米国では通用しません。上げ潮はすべての中・下流層の船を押し下げて悲惨な難破状況へ追いやっていると言って良いでしょう。全く一部の富裕層だけが、図々しくも2億ドルという退職金をもらって平然としています。それどころか、上流に属するハイテク産業の技術者でさえ、非常な経済論理で滑り台を転げ落ちて困窮し、中国やインドなどの低賃金労働者の雇用にシフトしています。
 大学にしても、理工学部門ではMITなどの一流大学を除くと、全体的にレベルが落ち、東南アジア諸国の方が凌駕しています。
 私がお気に入りに入れている創造論のサイトでは、米国の信仰者の数がどんどん減り続け、誰も彼もお金という偶像礼拝に陥りつつあると危機感を募らせています。「ある人たちは、正しい良心を捨てて、信仰の破船に会いました」(テモテ第一1:19)。
 とにかくこの本を読んで見る事です。暴力・セクハラ・いじめによる解雇、弱者同士の喧嘩、働く意欲の喪失、監視カメラによる身体の極限に至るまでの搾取、ウオルマートという貧者の為の安売りストアに隠れた従業員の奴隷的労働、退職後に全く生活出来ない仕組み等々。
 そしてなぜ私が「恐ろしい」と言ったのか、それは大多数の労働者が医療保険制度に入れない為です。ここがまだかろうじてそうはなっていない日本との大きな違いです。
 保険に入れず手遅れの乳がんになってしまったエルシリアは、それでも働き続け、がんは肺にも転移してしまいました。熱も嘔吐もありながら、彼女は労働組合のデモ隊の先頭に立って訴えをしました。この争議の激化でやっと会社は重い腰を上げ、医療保険の提供を認めたのです。でもこんな事は全く稀有な事例に過ぎません。多くの労働者が災害や病気でどんどん亡くなっている事でしょう。
 今やオバマ大統領でさえ、「彼らは、わたしの民の傷を手軽にいやし、平安がないのに、『平安だ、平安だ。』と言っている」(エレミヤ6:14)という彼らに適用されるでしょう。こんな事では、米国中がそのうち、次のような事態の大合唱になるでしょう。
 「イエスはお答えになった。『言っておくが、もしこの人たちが黙れば、石が叫びだす。』」(ルカ19:40)。為政者や企業のトップが過酷な抑圧をして労働者が沈黙してしまったら、石に代表される被造物でも不当だ!と叫び出すでしょう。ハリケーンが、地震が、洪水がそのうなり声を上げるでしょう。
 最後に「見捨てた石」とされた救い主イエス・キリストが来て、強欲な富裕層を罰し、過酷な労働に耐え抜き主に信頼した者たちを解放されるでしょう。