ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

本庶佑著『いのちとは何か』を読んでーその2

 前置きが長くなりましたが、本庶教授はまず第一章で「幸福感の生物学」というものを展開しています。その達成の根幹に「欲望」というものが存在し、「食欲、性欲、権力欲(競争欲)」の三つを主要なものとして挙げています。そのうち食欲・性欲はよく分かりますが、最後の権力欲=競争欲が問題です。例えば競争の厳しい米国で、勝ち抜いた者(欲望を充足させた者)は、果たして世間も羨むような「幸福感」を得ているでしょうか。
 「知恵ある者は、その頭に目があるが、愚かな者はやみの中を歩く。しかし、みな、同じ結末に行き着くことを私は知った。私は心の中で言った。『私も愚かな者と同じ結末に行き着くのなら、それでは私の知恵は私に何の益になろうか。』私は心の中で語った。『これもまたむなしい」と』」(伝道2:14−15)。
 幸福感の対極に「不安感」があります。人は自分の生存が脅かされる時、不安を感じます。ですから「不安感がないという幸福、この『幸福感』を獲得するために、人類は大きな発明をした…それは宗教であり」と本庶教授は考えています。しかし聖書の考え方からするとそれは逆です。まず全能の神が存在し、人間創造時に至福の生活を約束されたのに、人間がそれに反逆して「罪を犯し」、結果として幸福なき不安の生活に落ち込んだと考えます。

 第二章は「ゲノム帝国主義」となっています。ワトソンとクリックが解明したDNAの塩基対ですが、その当時はDNA→RNA→たんぱく質という「生命のセントラルドグマ」が主流でした。ところが肝心の遺伝子は人間の場合2万足らず、まだ遺伝情報の全体(=ゲノム)が手つかずで、それに取り組んだ結果、2003年に全ゲノムが解読され、さらに人間のゲノムの機能について百科事典の作成が続けられ、現在様々な事が分かって来ました。ジャンクDNAと呼ばれるたんぱく質に翻訳されない膨大なゲノム領域の80%に何らかの形で遺伝子の制御が関係している事が判明したのです。複雑巧妙な制御系が明らかになって来たわけですが、本庶教授はそれが「初めからデザインされてつくられたものとは考えにくい」と述べています。しかし聖書では、これをデザインされたのが神である事が明白です。本庶教授は最新の成果を踏まえ、「生命の原理は、生命独自の法則によってつくり挙げられたゲノム情報に規定される」とし、ゲノム帝国主義と名付けています。
 第三章・第四章ではその事をさらに発展させ、本庶教授の得意な免疫機構が説明され、また情報発現の階層性が言及されています。なかなか難しいです。
 第五章では免疫系の進化という事が述べられ、第六章で全ゲノム情報が異種の個体間で交換されている可能性があり、生命体の種類はほとんど「無限」に近い事が分かります。
 第七章で私たちに身近な「生・老・病・死」が取り上げられています。寿命を規定するテロメアの事、環境要因と遺伝要因との組み合わせで発症する病、医師の治す治療の限界を補完する宗教家の役割などが述べられています。
 第八章でその病のうちの「がん」が取り上げられています。
 第九章は心の働きや脳科学の事が触れられています。
 そして最後の第十章「生命科学の未来」です。しかしここで驚くべき展開がありました。今問題となっている遺伝子組み換え植物(GMO)の活用を本庶教授は勧めています。地球規模で食料問題を考える時、GMOを活用する事で、「遥かに多くの人を飢えから救うことのできる可能性がある」と本庶教授は言います。しかしそれには受け入れない人が多くいるので、論点を二つ挙げています。第一は体内での安全性確保の問題です。本庶教授の主張は「組み換えトウモロコシ・大豆などは、すでに数十年にわたって米国では多くの人に食されてきたが、具体的な問題は一例もない」です。「他の食品と比べ生じるかも知れない危険度はほとんど差がないので安全と言える」と言っています。これはたかだか数十年での観察結果であり、その後どうなのか分からない段階で安全と言うなら、まさに原発事故の放射能論議と同じではありませんか。本庶教授は生物学における御用学者なのでしょうか?

 画像はhttp://satehate.exblog.jp/14978042/より借用。
 第二に「環境への影響」があります。GMO植物の著しい繁殖で、生態系に与える危険性についても、「これまで広範に栽培された遺伝子組み換え作物がそのような性質を示した例はない」と言い切っています。そして「遺伝子組み換え作物は科学的には安全であるが、一部の人々の意識として安全ではない。私は、人類の未来の展望をひらき、地球規模の問題を解決するために、遺伝子組み換え作物の一層の改良と有効利用を促進する必要があると考えている」と強調しています。私はこれもまた時間的に見ても「科学的安全性」が立証されたとは言えないと思います。しかし本庶教授が徹底したダーウイン主義者なので、その主張は理解出来ます。
 私たちは福島の差別・沖縄の差別(そして他のあらゆる差別)を考えています。本庶教授にはそうした観点はないでしょう。そして「東大話法」で、私たち庶民を「素人が何を」と愚弄し続けるでしょう。
 その本庶教授にロベルト・コッホ賞(医学研究のなかでも主に微生物学・免疫学分野における優れた業績に対して与えられる―ウイキぺディアより)が手渡されました。結核菌を発見したコッホが、GMOの事を聞いたら泣きませんか?