ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

一億総うつの時代ーその背景

 片田珠美神戸親和女子大学教授が『一億総うつ社会』という本を書いているので、図書館で借りて読みました。
 病院の精神科を訪れる従来型のうつ病の人々は昔から居て、その数もそれほど多くはなかったと思われます。ところが題名にあるように一億総うつ病の時代と言われる現代で、新型うつ病の人々が爆発的に増えており、片田教授はその原因を1章から順を追って丁寧に解説しています。
 第1章で従来型のうつ病新型うつ病の症例が対比される形で紹介され、第2章で特に増加している後者について、その原因を探っています。それは1米国精神学会で作成された診断マニュアルDSMの普及でうつの裾野が広がった事、2抗うつ薬使用が拡大した事の2つを片田教授は指摘しています。
 一口に精神病と言っても様々な症例があり、その的確な判断が非常に難しいという事があって、米国では簡単平易な判断基準を作成しようという機運が広がり、診断マニュアルが完成しました(1980年で、版が重ねられ現在は第4版となっています)。それによって従来はうつと診断されなかった軽い症状の人々がうつと認定されるようになりました。
 それと並行する形で米国などの製薬会社がこぞって抗うつ薬の開発を推進して来ました。そして新しく登場したのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というものです。米国では「プロザック」という商品名で有名だそうです。従来の薬には多分に副作用が伴ったそうですが、このSSRIの代名詞となったプロザックにはそうした副作用はあまりなく、過食症やアルコール・ニコチン中毒にも効きそうだというので、大々的な宣伝がなされ、爆発的に売れるようになったのです。勿論日本でも別の商品名で普及しています。
 米国から始まったグローバリズムはてなキーワードによると「市場主義とアメリカ的価値観・社会システムの合体物を世界的に展開しようとする、『新手の文化的世界支配戦略』 のこと」とあります)の影響をもろに受けた日本では、特に小泉自民党内閣の下で「能力主義」「成果主義」「自己責任論」などが深く浸透し、従来の社会主義的な会社経営が立ち行かなくなり、精神的に追い詰められる人々が急増しました、そうした人々が難問を解決してくれる「幸福な薬」としてのSSRIをこぞって求め、医師のもとにやって来るようになりました。それで米国流診断マニュアルと相俟って、彼らが簡単にうつ病と診断され、抗うつ薬が手軽に処方されるようになった次第です。患者の数が多様に広がったのです。さらにDSM3版からうつ病とは異なる神経症(パニック生涯など)も、うつ病の中に包摂されるようになった為、余計に「うつ病患者」とされる人々が増えた事になります。今や彼らは診断者・抗うつ薬販売者の「消費者」となってしまいました。米国標準は今や日本の医学界まで着実に浸透しつつあります。患者=消費者論はまた別に述べます。
 また片田教授は第3章以下で、そうした「総うつ社会」を招いた社会の側の要因として、「他責的傾向」と「自己愛」をキーワードに論を進めています。
 これは平たく言えば、自己中心で自分の気に入らない事は何でも他人のせいにしてしまうという病理です。そうした人々が自己実現に失敗すると新型うつ病になってしまうのです。片田教授はそうした人々が幸せになったためしがないと言い切っています。しかし現実はそのタイプの人数が増加しているために、「一億総他責的社会」≒「一億総うつの社会」に向かっているわけです。キリスト教の背景がない日本では加速度的にそこに向かうでしょう。
 それはこの終末の時代の聖書の預言とも合っています。
 「終わりの日には困難な時代がやって来ることをよく承知しておきなさい。そのときに人々は、自分を愛する者、金を愛する者、大言壮語する者、不遜な者、神をけがす者、両親に従わない者、感謝することを知らない者、汚れた者になり、情け知らずの者、和解しない者、そしる者、節制のない者、粗暴な者、善を好まない者になり…」(テモテ第二3:1−3)。