ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

ことばの力と主イエスのみことば

 朝日夕刊連載の「イラク 深き淵より」が終わりました。いろいろ学ぶところがありました。
 特に8月24日の「ことばの力に賭けてみる」は印象的でした。
 そこでの登場人物は名古屋で弁護士をしている川口創氏です。
 2003年3月、米英軍はイラク戦争を始めました。圧倒的な力でバクダットが陥落、政権は崩壊し、治安は戻るかのように見えました。しかしその後反乱者たちによる自爆テロが続き(米軍が来年末までに完全撤退する事が決まりましたが、今でも激しい自爆テロは続行中)、日本の自衛隊さえ派遣されようとしていました。
 川口氏は「世界中の市民が反対したけれど、戦争は止められなかった…何とかしなければ」と、当時を振り返っています。しかしこと自衛隊に関する裁判でこれまで市民側が提訴した裁判は、すべて敗訴です。当然周囲にいる同僚の弁護士たちも、「派遣差し止め裁判」などやめておけの一言でしたし、社会の空気も「異議を唱えても無駄」でした。ちなみにこれが第二次世界大戦中の日本なら、即憲兵に捕らえられて監獄行きだったでしょう。
 しかし川口氏はあきらめませんでした。契機は評論家大塚英志氏が編集した、中高生による憲法前文への論集でした。ちょっとそれを引用してみます。
 「ぼくたちは始まってしまった戦争という『現実』の前には『ことば』も『理念』も無力だと諦念してしまう。だがそう簡単にぼくたちは『ことば』によって『平和』を求めることを断念してしまってよいのか」。
 この或る中高生のことばが川口氏を動かしました。早速大塚氏を訪問し、「裁判と言う場で、ことばの力に賭けてみるのも意味がある」という言質を得た川口氏は堅く決心し、同じベテランの先輩弁護士たちに声をかけて賛同を得、ホームページを立ち上げて訴え、一ヶ月のうちに約80人の弁護士たちによる弁護団が出来ました。さらに原告の数も増え続け、最終的に3千人余となりました。
 これだけの大きな力となった背景には「戦争反対」という根強い草の根の声があったようです。私たちの世代では「ベ平連」という活動があり、1970年代に相当浸透していたと思います。私もその一員としてデモをした経験があります。
 勿論地裁は門前払い、しかし彼らは諦めませんでした。そして控訴した名古屋高裁では、航空自衛隊がバクダットに多国籍軍を空輸していた事実を違憲と認定し、「武力行使を禁止したイラク復興支援特別措置法に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいる」との判決を得ました。原告側控訴は棄却でしたが、この判決を川口氏らは「勝利」と受け止めました。
 まさにことばの力を信じて提訴したからこその高裁判決。国は上告出来ない為、確定してその判決文は残り続けています。
 これを考えた時、改めて思ったのは聖書の神のみことばの力です。
 「神はわれらの避け所、また力。苦しむとき、そこにある助け」(詩46:1)。
 この全能である神への信頼により、神はその力を発揮し、私たち弱い者を助けて下さいます。時としてそれを忘れてしまう事がありますが、神はそのみことばに忠実です。従ってその御力に頼って勝利した時、私たちも詩篇作者と共にこう証出来ます。
 「主は私の力、私の盾。私の心は主に拠り頼み、私は助けられた。それゆえ私の心はこおどりして喜び、私は歌をもって、主に感謝しよう」。
 大塚氏は実質勝訴の判決に号泣しましたが、私たちは主の御力による勝利を心から喜びましょう。