ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

古澤満『不均衡進化論』を読む

 図書館で最新の古澤満著『不均衡進化論』を借りて読みました。筑摩書房のこの本のつくりは丁寧で、活字も大きめ、著者の分かりやすい説明もあって、何とか読み終えました。
 著者の言いたい事は良く分かりました。
 遺伝子DNAはひも状の二重鎖になっていますが、その複製を行なう時、鎖の或る特定の開始点から二重鎖がほどけ、それぞれの鎖を鋳型として新しい鎖が合成されます。その時二本鎖がほどけてゆく方向と、新しい鎖が合成されてゆく方向が一致している側は、新しい鎖の連続的な合成が出来ます。ところがほどけてゆく方向と逆になる側の新しい鎖は,構造上不可能になってしまいます。そこで100〜200塩基から成るDNA断片(フラグメント)を、ある間隔をおいて順次合成して行き、最後にその断片を繋ぎ合わせて複製を完成させます(不連続鎖合成)。この断片の事を発見者にちなみ岡崎フラグメントと呼びます。

 この図で複製方向になっているのが連続鎖、逆になっているのが岡崎フラグメントで2つの青色の断片で示されています。
 古澤氏が注目したのがこの二本の鎖のうち不連続鎖と呼ばれているものです。なぜかと言いますと、その不連続鎖合成には連続鎖合成に比べ複雑なシステムが使われるので、間違いが多く生じやすいのではないかと推察されたからです。「DNAの変異はこの不連続鎖に偏って、不均衡に入るのではないか…」。
 そして氏は不均衡変異モデルを図示し、世代を幾ら重ねても遺伝子型の「元本」は保証されていて、しかも多様性の創出が実現される事を述べ、それこそ不均衡進化理論の唯一にして最大のコンセプトであるとといっても過言ではありません、と主張しています。それですと集団の消滅する可能性も低くなります。
 この元本が保障され、変異の閾値を超えて多様性が拡大される事を、氏は「進化」と捉えています。
 次に氏はこの進化の加速という方向での議論を続けてゆきます。
 しかし結局この場合の変異率を一万倍に引き上げても、一億年の進化の歴史を研究するには一万年にわたって研究を続ける必要がある事を、氏は認めています。それでも氏は自己の観点から生物進化の謎を追い続けてゆくつもりでいます。
 しかしそんな事が可能でしょうか。一億年と言いますが、それだけ生きて生物の進化を目撃した人は誰もいませんし、いかなる文献もありません。
 氏は最初の方の章の終わりで、「今日主流の進化説に対抗して出された多くの進化説は、残念なことに、ことごとく日の目を見ることなく終わってしまっています」と言っていますが、おそらくそう遠くない将来、この不均衡進化論も消えて無くなるでしょう。
 聖書によれば万物は神によって創造されたとあるからです。「初めに、神が天と地を創造した」(創世1:1)。