ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

高木仁三郎著『プルトニウムの恐怖』をもう一回読んでみる

 高木氏は1938年生まれ、2000年62歳という若さで大腸がんにより亡くなりました。それからまもなく11年になろうとしています。大学時代から主としてプルトニウムの事を研究し続け、早くから反原発市民運動家として在野で頑張って来て、第二のノーベル賞と呼ばれるライト・ライブリフッド賞を受賞した経験を持つ、非常に知名度の高い人です。理系でありながら、私たち文系の人々に対して非常に分かりやすい文体で、原発の危険性を訴え、且つ広く啓蒙運動を行って来ました。いわゆる「原子力村」の「最高の知性を誇る」学者・研究者たちを向こうに回してたじたじとさせてきた為、彼らから故意に無視されて来ました。徹頭徹尾市民の側に立って論陣を張った為、今も「高木氏が生きていたらなあ」と残念がられている偉大な人でした。
 原発事故が起きてから改めて岩波新書に収められている上記の本(1994年発行ですからもう17年になろうとしています)を読み直して見ました。以前東海村や大洗の原子力開発機構からそう遠くない所に住んでいたので、また創造論の立場からウラン238の放射性崩壊が過去において非常に速まっていたという研究論文を勉強していたので、ウランに関する関心は深いものがありました。しかし長崎の原爆で使われたプルトニウムについては今一つだったので、新たに勉強し直した次第です。そうしたら内容は今から17年近く前とは到底思えないほど迫真力があり、繰り返し読んでいます。内容が少しでも理解出来ると、セレンディピティー(ふとした偶然をきっかけに閃きを得、幸運を掴み取る能力ーウイキペデイアより)を感じてしまいます。
 付箋で一杯になってしまいましたが、特にこの本のプルトニウムに関して言えば、天然に存在せず、1940年大学の実験室で人工的に作られた新しい元素(原子番号94)である事を知りました。その名がプルートー冥王星)にちなんで命名された為、冥土(地獄)の王の元素となったわけで、高木氏によると、それは「あまりにも皮肉な偶然」でした。後にこのプルトニウム同位体の一つプルトニウム239が発見されましたが、それは「きわめて核分裂をおこしやすい」という事で、科学者たちの注目を集めました。さらにその同位体はウランの同位体238に中性子をぶつけても生成する事が分かりました。またそのプルトニウム239は、半減期がおよそ24,000年と長期的な安定性を持つ事も分かりました。それらの事実が原爆や原発に適用される事になったのは、今日よく知られている通りです。
 プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX=通称モックス)を燃料としており、冷却材ナトリウムの事故で有名な「もんじゅ」の「高速増殖炉」に触れた高木氏は、それがフェニックス(古代エジプト神話の不死鳥を意味する)とはならず、聖書のバベルの塔(計画が中途で頓挫する事を意味する)になるという予言もしています。まさに今日の事態はそれを裏付けています。
 しかもプルトニウムは消え去る事がなく、処理する事も出来ないので、永遠に管理してゆかなければなりません。しかしその貯蔵施設が天災や人為的破壊から守られる保障はないと、高木氏は言い切っています。さらにその高レベル放射性廃棄物の最終地下処分場の場所さえ確保されていないのです(近頃米国でもネバダ州ユッカマウンテンは、オバマ大統領の命令で中止が決定されました)。
 最後に中性子の減速および炉心の冷却の為軽水(普通の水)を用いた原子炉である軽水炉で、プルトニウムとウランの混合酸化物を燃やす「プル・サーマル計画」も、福島原発3号機に見られるように、その危険性などからやはり頓挫しつつある事を、高木氏は予見していました。軽水炉といい、高速増殖炉といい、次から次へと繰り出す原発施設に栄光を求めた人々の愚かさが示されます。
 「神の、目に見えない本性、すなわち神の永遠の力と神性は、世界の創造された時からこのかた、被造物によって知られ、はっきりと認められるのであって、彼らに弁解の余地はないのです。というのは、彼らは、神を知っていながら、その神を神としてあがめず、感謝もせず、かえってその思いはむなしくなり、その無知な心は暗くなったからです。彼らは、自分では知者であると言いながら、愚かな者となり、不滅の神の御栄えを、滅ぶべき人間や、鳥、獣、はうもののかたちに似た物と代えてしまいました」(ローマ1:20−23)。