ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

大木聖子・纐纈一起著『超巨大地震に迫る』を読んで

 東大地震研究所に勤めているお二人ですが、珍しい漢字と読み仮名の方々です。聖子はさとこと読み、纐纈一起はこうけつかずきと読むそうです。
 手元にある地震関係の本を読み返しても、2004年位の段階では、「プレートテクトニクス」における海溝への沈み込み地帯で、沈んで行く海洋プレートと、その上で接している大陸プレートの間の境界面は、べったりくっついているように記述され、且つ画像もそのようになっています。
 しかしこの東日本大震災の謎に迫った本では、新たに「アスペリティモデル」という専門語が紹介されています。つまりそれは大陸プレートと、海洋プレートとの間に、強く固着する部分と、ゆっくり滑り込んでゆく部分が存在するという事で、この固着部分の事を「アスペリティ」と呼ぶのだそうです。

 画像はhttp://hrsryu.geo.hirosaki-u.ac.jp/monthly0804/index.htmlからお借りし、一部改変しました(責任は私にあります)。このサイトの説明では、「大きなアスペリティは大地震を引き起こしますが,発生間隔は数十年以上です.小さなアスペリティでは短い間隔で小さな地震が発生します」とあります。小さなアスペリティは、ゆっくり滑る部分において、孤立した2つのアスペリティが同じ場所で同じように滑って小さな地震を起こすので、別名相似地震とも呼ばれているそうです。
 このアスペリティがどうして分かるのかと言いますと、それは長期にわたる地震波の観測による解析によってだそうです。
 また文部科学省の資料では、東北地方の太平洋沖に関しては、大きく7つの区画に分けられています、そのうちの6つの区画が1三陸沖から房総沖の海溝寄り、2三陸沖中部、3宮城県沖、4三陸沖南部海溝寄り、5福島県沖、6茨城県沖の順で決まっています(下右図参照)。その6つの区画内の赤線で囲った部分が今回の長さ400キロ、幅200キロに及ぶ震源域です。

 その区画領域でどれ位の規模の地震が生じるかは、30年間の発生確率として示されており、その区画のどこかで予測された規模の地震が生じた場合、それは想定地震となるのだそうです。発生のパターンは2つあって、1単独、2それ以上ですが、特に過去の例から図に示された宮城県沖と三陸沖南部海溝寄りの2つの連動が予想されていました。
 それがです。この本によると今回の東日本大震災では、単独でもなく、2つの連動でもなく、6つの区画全域で断層破壊が生じ、マグニチュード9に達したわけで、これが「想定外」という事になりました。しかもその区域全体の滑り分布図を作成してみると、なんと上述のように小さなアスペリティが多数寄せ集まったものには決して見えず、広い面積を占める2つ、ないし3つの特に滑りが大きかったアスペリティしか見えなかったそうです。これが過去の事例からも予測出来ず、「我々は科学の限界を悟ることになる」と著者の一人である纐纈教授が述べています。
 しかしこの巨大地震、著名な地震学者でカリフォルニア工科大学名誉教授の金森博雄氏が他の著者たちと連名で書いた英文論文では、そうした想定もされていた事が翻訳した纐纈教授によって分かったそうです。それはどういう事かと言いますと、「プレート境界は100パーセント固着していて、蓄積したひずみの3/4は将来、超巨大地震か巨大津波地震、あるいは巨大サイレント地震によって解放される」というものでした。それが「実現してしまった」事になります。
 私はこれを読んで、1番最初のブログを思い出しました(2010年2月1日)。東大人類学教室の諏訪元教授らが米国の雑誌サイエンスに英文で投稿したもので、それが日本語に訳されなかった件です。
 私はこれを学者の怠慢であると改めて強く抗議します。日本人学者たちは自己の論文を認めてもらいたくて、英文でネイチャーとかサイエンス等々一流雑誌に発表しますが、その成果を我々庶民には決して邦訳で還元しないのです。また分かりやすい形で啓蒙しないのです。猛省を促します。それはとにかく…。
 「ああ、神の知恵と知識との富は、何と底知れず深いことでしょう。そのさばきは、何と知り尽くしがたく、その道は、何と測り知りがたいことでしょう」(ローマ11:33)。
 科学の限界を悟られたお二人が、今後測り知りがたい自然とそれを造られた神に対し、畏敬の念を持ってさらに研究を進められる事を望みます。