ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

皮膚などの免疫系調停役としてのランゲルハンス細胞の働き

 2011年10月17日のサイエンスデイリサイト(英文)に、「皮膚における免疫系調停役の発見」と題した論文の紹介記事がありました。元になっているのは、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に載っています。
 私たちの身体には約60兆個の細胞がありますが、それよりももっと多くのバクテリア(細菌)が皮膚や腸の中で生息しています。ところがそうしたバクテリアは無害である事が免疫系では知られています。身体にとって異質なものがどうして共存しているのでしょうか。コレラや最近見落とされがちな結核菌などに対しては、免疫系は総動員され、それらを攻撃するのに。
 シドニーにあるセンテナリー研究所のチームは、平和共存の為の「和平監視役」「調停役」として、皮膚の浅いところに存在するランゲルハンス細胞を調べました。
 ネットの情報によりますと、人間の血液中の白血球中に存在する単球は、組織に入って成熟し、マクロファージ,樹状細胞,ランゲルハンス細胞の3つに分化するそうです。このうち組織内の樹状細胞については、免疫反応の詳しい仕組みが解明され、今年度のノーベル医学生理学賞を3人の研究者たちが受賞した事は、記憶に新しいところです。特に米国ロックフェラー大学ラルフ・スタインマン教授が突っ込んだ研究をしました。
 今回のPNAS論文では分化した細胞のうちのランゲルハンス細胞について、チームのバーバラ・ハゼカ教授らがその仕組みを研究しました。
 実験にはランゲルハンス細胞だけ免疫系を刺激するマウスが用いられました。その研究結果ですが、長期にわたる免疫反応を何とかして活性化させようとしても、ランゲルハンス細胞は免疫寛容を引き起こすというものでした(免疫寛容は特定抗原に対する特異的免疫反応が欠けた状態、あるいは抑制された状態の事を指しています)。この免疫寛容は上記樹状細胞の免疫作用とは大変異なっていたという事になります。ですから皮膚に無害なバクテリアが存在するのです。ランゲルハンス細胞は皮膚表面における免疫寛容を起こさせる見事な調停役、平和監視役となっています。
 ところが免疫系は皮膚において層状防御構造をしており、浅いところを通過した有害なバクテリアに関しては、そこに存在する樹状細胞が免疫反応を引き起こし、それらを殺してしまうのです。実に巧妙な仕組みです。
 一方腸内にはビフィズス菌などのいわゆる善玉菌が存在し、通常その働きの為に有益な作用をしています。私は35年前胃を全摘しましたが、それによって腸内のバランスが著しく崩れ、悪玉菌がひっきりなしに発酵腐敗し、腸を膨れさせていました。ガスとして腸から出さないと(人前で我慢していると)、必ずといって良いほど「腸閉塞」を起こします。私はそれで再三入院という事になりました。
 オーストラリアには炎症性腸疾患を持った人々が多く、腸内の善玉菌などの抗原に対して免疫寛容ではありません。そこでハゼカ教授らは、この和平監視役としてのランゲルハンス細胞の仕組みを模倣する事が出来れば、炎症性腸疾患にうまく対処出来るのではないかと期待しています。
 「わが神、主よ。あなたがなさった奇しいわざと、私たちへの御計りは、数も知れず、あなたに並ぶ者はありません。私が告げても、また語っても、それは多くて述べ尽くせません」(詩40:5)。