ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

らい病について

 2012年1月29日のサイエンスデイリサイトで「忍びやかならい病の病原体は重要なビタミンD依存の免疫応答をうまく逃れている」といった題の論文が紹介されていました。元の論文はカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者たちが発表したもので、同サイトのニュースルームで見られます(http://newsroom.ucla.edu/portal/ucla/stealthy-leprosy-pathogen-avoids-218620.aspx)。
 らい病は世界でも最も古い頃から知られている病気で、慢性感染症です。それは皮膚、末梢神経、上気道、目などに作用し、手や顔、足の表面を傷つける事が出来ます。2008年段階では、世界でほぼ249,000人の新しい患者数が報告されていました。
 その病原体とはらい菌(マイコバプテリウムーレプレ)の事で、日本では「癩病」の病原体として恐れられていました。それは差別用語として忌避されて来ましたが、1873年にノルウエーのハンセンがらい菌を発見してから、専ら「ハンセン氏病」又は簡単に「ハンセン病」として、今日に至っています。

研究者たちは比較的穏やかな「類結核らい」(T型)と、もっと深刻で身体中に広がる「らい種性らい」(L型)を用いて、人間の皮膚の損傷域におけるマイクロRNAを比較研究しました。
 マイクロRNAとは、細胞内に存在する長さ20から25塩基ほどの小さな1本鎖RNA(=リボ核酸)の事で、情報を運び、免疫系防御を含む細胞活動に指令を与える遺伝子の発現を調節しています。それ自体は蛋白質を作る為の情報を符号で表わす事が出来ません(高校生物で出て来るメッセンジャーRNAなどはそれが出来ます)。右図はhttp://bsw3.naist.jp/achievements/index.php?id=600からお借りしました。

 今度の新発見はこの病原菌がマイクロRNAを利用して、私たちの免疫系における応答を弱めるというものです。
 科学者たちはこの2つの型のらい菌から13のマイクロRNAを同定しました。このうちL型らいに一般的に見られるマイクロRNAが、マクロファージやT細胞を含む主要な免疫系細胞に指令を与える為、重要な役割を果たしている遺伝子を標的にしているらしい事が分かりました。
 その特殊なマイクロRNAはhsa−mir−21と呼ばれているもので、それが感染との戦いを助けるのに利用される、ビタミンD依存性免疫経路の遺伝子活動を妨げています。ですからマクロファージに存在したこの特殊なマイクロRNAを使用不能にしてしまうと、その細胞は再びらい菌を殺す事が出来るようになりました。ためしに結核に感染したマクロファージにhsa−mir−21を入れてみると、やはりその菌を殺す力を阻止したそうです。それはビタミンDの不足が様々な感染症を起こしている事とも関係あるようです。
 聖書ではこのらい病と訳された言葉、旧約ヘブル語ではツァラアトと言い、ギリシャ語70人訳聖書ではレプラと訳されました。新約のギリシャ語でもレプラです。旧約ではレビ13〜14章で事細かに説明されていますが、どうもらい病とは違うという事で、私たちの新改訳聖書第三版ではツァラアトがそのまま使用されています。
 「すると、すぐに、そのツァラアトが消えて、その人はきよくなった」(マルコ1:42)。
 翻って日本では奈良時代に「白癩」という言葉があり、鎌倉時代で「癩病」という言葉が出現、江戸時代以後差別語として定着した歴史があります。聖書でもそれを踏襲してしまったわけで、実際のヘブル語のツァラアトが似て非なるものであるゆえ、新しい聖書でらい病人などの言葉が使用されなくなったのは良い事です(ちなみに新共同訳聖書では「重い皮膚病」などと訳されています)。