ハテヘイ6の日記

ハテヘイは日常の出来事を聖書と関連付けて、それを伝えたいと願っています。

再びたくきよしみつ氏の本を読んで

 たくきよしみつ氏の事は以前ブログで触れました(http://d.hatena.ne.jp/hatehei666/20111230/1325237758)。
 『裸のフクシマ』という題の本を読んでからです。それが出版されたのが昨年の10月、そして今年の4月に岩波ジュニア新書から『3・11後を生きるきみたちへ』という題の本を出しています。前著から約半年後の事で、基本的な事柄は同じです。

 前にも書きましたが、たくき氏は文系大学を出た人です。ところが原発の西隣の川内村で事故を経験し、原発の事を突っ込んで勉強して来た人です。原子力を専攻した並の御用学者ならひけをとらないと思います。この本にも書かれていますが、原発以前に槌田敦著『資源物理学』と、室田武著『エネルギーとエントロピーの経済学』を読んで勉強していた為、事故への備えは或る程度出来ていて、いち早く逃げる事が出来ました。しかしその後この村に戻って来ました。今は残念ながらそこに踏みとどまらず、栃木県の日光市のはずれに移り住んでいます。これは逃げたというより「理不尽な形で…追われた」形になり、悔しさが募っていると、あとがきで書いています。
 ですから『裸のフクシマ』でも少し触れられていた川内村周辺地域の人々の人間関係について、今回やや詳しく論じています。それは川内村だけでなく、他の地域(飯館村南相馬市など、勝手に行政が地域に線引きをしてしまったところ)でも生じているきわめて厄介な問題です。
 例えばたくき氏が戻ってきた川内村の例で行きますと、第三章「壊されたコミュミティ」に詳しい記述があります。
 この村は原発20キロ圏、30キロ圏にある為、警戒区域と緊急時避難準備区域の2つの区域に分けられました。しかしこの地域では住民全員に義捐金が均等分配されました。国と県から一世帯40万円、村からの直接の義捐金は一人5万円、国と県の二次分配では一人28万円で、子ども3人の5人家族でそれらを合わせると、一世帯205万円という事だそうです。さらにここは東電による補償対象地域指定となっている為、避難を余儀なくされた住民一世帯あたり仮払い金として100万円、さらに第二次補償仮払い金として、避難の期間に応じて一人あたり10〜30万円支払われました。それで上記5人家族では、205万円にさらにこの補償仮払金250万円が支給され、合計455万円となりました。これが仮払金の内容ですから、本補償となるとさらに追加されます。「精神的損害補償」と名付けられ、避難から帰宅の期間まで、一人当たり月10万、5人家族なら月50万円です。
 ですから一度避難先から自宅に戻ってしまうと、この月50万円はそっくり無くなってしまいます。すると出来るだけ避難生活を続け、自宅に戻ろうとする人々の数は、当然少なくなります。家で仕事をしないほうが収入が増えるという異常な現象が生じました。これでは川内村でも、自宅に戻り、仮に農業再開が可能になったとしても、戻りたいと思わない人々が多くなり、ふるさと復興が遠のいてしまいます。
 それゆえ川内村のように緊急時避難準備区域に指定されたところが、政府によって解除されてしまえば、この一人当たり10万円は支給されなくなります。そこで住民の間から解除するな!という声が上がっても、けだし当然なのでしょう。30キロ圏で農家の勤労意欲、郷土愛が失われるのは目に見えています。
 比較的恵まれた川内村ですが、これが例えば相馬市となると、義捐金は、死者・行け不明者の数に応じ、また家屋の損傷の度合いに応じて差がつけられ、県の義捐金だけ一律5万円という事ですから、死者も出ず、家屋の損壊もなかった場合、県からのたったの5万円だけという事になります。東電の30キロ圏仮払い金の対象にもなりません。
 その30キロ圏外ですと、政府では一方的に23市町村を指定し、精神的損害補償に準じた形で5人家族136万円です。しかしその対象地域から外れた白河市などは一銭も出ません。そこの住民が怒るのも当然です。農産物の被害は甚大だったのですから。
 こうしてたくき氏は「でたらめ目な線引きで、一方には住民全員に賠償金が支払われ、一方には被害だけが押しつけられて無視されるという状況を、国がわざわざつくりだす…」と慨嘆しています。
 7月17日には飯館村でも、避難区域を再編という記事が載っていました。一番南の長泥地区は帰還困難区域に指定されてしまい、多くの人々が憤っています。
 このお金を巡る問題、聖書ではこうあります。
 「金銭を愛することが、あらゆる悪の根だからです」(テモテ第一6:10)。
 「金銭はすべての必要に応じる」(伝道者の書10:19)。
 お金を巡るどろどろとした問題はどうしても生じて来ます。しかしどこの市町村でも津波原発の被害者の損害額は莫大です。せめて政府としても、そうした広大な被害地域の所帯に一律幾らと決めて出し、その生活の安定を図る事が早急に必要となって来るはずです。